第百四十七話 その道に
「じゃあ行こっか」ラッシュは前を歩きだしたが、アイはその場を離れようとしなかった。
「どうしたん?」顔を屈めるアイの顔を見た時、心臓が飛び出しそうになった。
「アイちゃん……目の色が真っ赤に……」
「能力の使い過ぎね。もう目の前が何も見えないわ。あなたの顔も、これから起こるべく未来も」
「そんなんどうでもええ……どうでもいいんや」ラッシュはアイをそっと寄せ付けた。触れた瞬間アイはびくっとしたが、そっと肩を寄せる。
「しばらくの間、目が見えなくなるわ。キマイラに勝てるかな!? 陽平に冷たく当たったのが駄目だったのかな」
「俺にまかせとけ、キマイラなんかヒヨコボートを漕ぐくらい簡単に倒せるわ。陽平の事と晴子さんの事は大丈夫やから。自分で自分を責めたらあかん。最後は漬け物石のように心が固まってしまうで」
「漬け物石?」
アイはくすくすと笑い始めた。「バカな事を言うラッシュの心は本当に読めないね」
「そう言ってもらうのが一番嬉しいわ。時間がないし、行こうか」
二人は②の門をくぐろうとした。通り過ぎた時、部屋中に警告音が鳴り響いた。
「違法者発見!! 違法者発見!! 直ちに従業員は違法者を捕らえ、死刑の間へ。反抗をするなら殺しにかかりなさい」
「死刑の間って何や? キマイラ部屋じゃないんか?」
アイへ話しかけるも声が返ってこない。能力の使い過ぎでへばっているのだろう。
「今年最悪の日になりそうやな」ラッシュは突き付けられた槍に身を屈めた。




