第百四十四話 脱走ロワイヤル③
「ぐわっ!!」陽平は腰を強打し、顔をしかめた。
「い、違反行為だ……」走り去ろうとするアイに向かって言った。
「あなたの方がよっぽど違反じゃないの。人を蹴落として……パートナーになったつもりはないから」
アイは陽平を尻目に①の門をくぐり、大きな部屋に出た所を左に曲がった。
ラッシュがどこへ行ったか行動パターンは読めていた。ゲームが始まった時、念のためにラッシュの未来を視ておいて正解だった。数十メートル進むと、ラッシュはパートナー(パートナーと言っても見る限りおばさんだが)と口論していた。
「ほら、さっきの部屋の所、右いうたろ? 俺の言った通りやん?」
「何? 私が悪いって言うの? 前回はこの道が正解だったのよ。間違ったからってリーダー気取りしないでくれる?」
「なんでやねん、あんたの言う通りにしてたら進めへんからしてるだけやん。もうみんな先行ってるで」
「知ってるわよ。でもなんかあんたと組んでいると効率が悪いのよね。誰かパートナー変わってくれないかな?」
「こっちから願い下げやわ!!」
ラッシュとおばさんが睨み合いをしている間をアイは制止した。二人はきょとんとした顔をしている。
「アイ……やんけ。無事やったんか?」
「私は大丈夫よ、あいかわらず元気そうね。この人がパートナーなのね」アイはおばさんの方を見た。
「何? あんたも邪魔する気なの?」
「いいえ、その逆よ。あなた達と一緒にこの魔の工場から脱出しに来たのよ。さぁ行きましょう!!」
アイの前へ行く姿に二人は目的を思い出し、一緒になって後を追った。
「なぜ一人なの?」おばさんはアイの背中を追いながら言った。
「えっと……」
「晴子よ。晴れに子供の子、色々あってここへ連れて来られたの」
「そうですか……晴子さん、私はパートナーがダメ男で頼りなかったので、一人で行動することにしました」
「なるほどねぇ、その気持ちわかるわ」
二人の視線を感じたラッシュは、猛烈に男の仲間が欲しいと感じた。




