第百四十三話 脱走ロワイヤル②
「本当にあなたは最低な人ね」アイは蔑むような目で見た。
「どう言われてもいい。生きる勝率を増やしたいだけだ。現に君にも生存確率はプラスになったわけだ。僕たち仲間だろ?」
「私の知っている仲間はそんな事はしない。たとえ危険にさらされようとしても立ち向かっていくのよ」
「RPGのやりすぎだろ、そんな正義みたいな奴はいない。ここは生存をかけた場所だ」
陽平はアイをひっぱり、階段を登っていく。途中犬の顔をした蜘蛛が上から降りかかってこようとも、
別のチームを盾にし、先へと進んで行った。
「こうやって生きてきたの?」アイは今すぐにも陽平を殴りたかったが出来なかった。
「そうさ、何人もの仲間を犠牲にした。中には親しい人もいた。でも……脱走する事はできなかった。いつも中途半端な所で生き残るんだ」
後方から蜘蛛の糸が飛んで来て、アイの腕に巻き付いた。アイは一瞬身動きが取れなかったが、陽平はすぐ様どこに拾ったか分からない鉄パイプで蜘蛛の糸を切断した。
「……そうやって他の人も助けたらいいのに」
「自分の事で精一杯なんだよ。それに君に死なれては困る。君には予知能力がある。どのルートで最短の脱出ができるか見て欲しい。出ないと門が閉まってしまう」
「門?」
「あぁーもう。そうだ、門だ。僕たち囚人がいる牢屋は施設の中心部にある。施設は牢屋を中心に円形に構成されていて、牢屋から外まで合計7の門があるんだ。今目の前に赤い門があるだろ? あれが①だ」
アイは陽平が指す方向を見た。確かに施設にあるべきではない鳥居のような門がそこにはある。
「⑦つの門をくぐれば脱走成功、⑤つの門をくぐれば生き残り決定、④以下はその場でジ・エンドさ」
陽平は説明が面倒くさいように早口で続ける。
「僕は三度、⑤つの門をくぐれたがそれ以上進む事が出来ない。だからこそ君の力が必要なんだ。未来を視る力が!!」
「……人を勝手に物みたいに扱わないでよ。あなたには協力しないから」
アイはポケットから手錠の鍵を取り出し、手錠を解いた。
陽平が何か言う前に、アイは陽平の胸ぐらを掴み、背負い投げをした。




