第百四十二話 脱走ロワイヤル①
部屋中に警報が鳴ったかと思うと、一斉に牢屋のドアが開かれた。人々が声を出しながら出ていく足音が聞こえてくる。
「どうなってるの?」アイはその足音に負けないくらい大きな声を出した。
「時間がない、走りながら話す!! まずは……これを!!」
急に手の自由が利かなくなった……っと思ったら、手錠をかけられた。
「なにするの?」
「これがルールなんだ。グズグズするな、時間がない!!」
勢いよくドアを出て、二人は左手側へと走った。同じ囚人達が血眼になって走っている、その姿の中にはラッシュもいた。
「ラッシュ!!」アイは叫んだ。
「相手チームと手を取り合ったら駄目だ」陽平は身体を前へ出し、遮断した。
「どうして? 説明して!!」
「ルールその① 脱走出来なかった者はキメイラ化される
ルールその② 相手チームとの協力プレーは認めない
ルールその③ 手錠を外した時点で二人は失格となる」
「どうして、こんな事を……」
「奴らの遊びさ、僕たちが必死に逃げる姿を奴らは楽しみたいのさ。生にしがみつく人間の最後の姿を……もちろん奴らも僕たちを逃がさないように追ってくる。奴らと戦わなくてはいけない、死んだら終わりだ」
「じゃあみんなと一緒に囲まって動けば」
「奴らの的になりかねない。全員で捕まってしまえば終わりだ。こんな方法はあるがな……」
陽平は前に走っている二組に足を掛けた。二組は綱に引っ掛かた無邪気な獣のように転んだ。
「あっ!! なんて事を……」アイはこけた二組を振り向いた。
「これがここで生き残るゲームなんだよ。他人なんてくそくらえだ」




