第十四話 あの日ふたたび
「誰かと思えば、いつぞやのべんきマンじゃないか。トイレの場所を間違えたのか?」
狛犬は翔太の頭をペシペシと叩きながら言う。後ろの仲間達(猿山、大雉)もそれを見てにやにやする。
「ただ通りかかっただけだよ。それじゃあ」
翔太は狛犬の顔も見たくなかったので、その場を去ろうとしたが、後ろから腕を掴まれた。
「おいおい、久しぶりの再会でえらく冷たいじゃないか。一緒に遊ぼうぜ。あの場所で…」
翔太はあの場所をすぐ様察知し走り去ろうとしたが、強く掴まれた腕を話す事は出来なかった。仲間達にも抑え込まれ、トイレに引き込まれてしまった。
トイレ内から何かを叩く音が響き渡る。
「いい素振りの練習になるぜ」
狛犬は翔太を壁側へ立たせ、水のついた汚いトイレブラシでおしりをパシパシと叩く。
「お前たちもやってみろよ。抵抗しないから、やっていてストレス発散になるぜ」
狛犬の子分たちは順にトイレブラシで翔太のおしりを叩き続けた。
翔太は声を上げず、目をつむりひたすら耐え続けた。抵抗をして跳ね除ける事も出来たかもしれないが、あの頃のトイレでいじめられた嫌な記憶が頭の中で何回も蘇る。他の人に言い広められたらやっと回復した学生生活が、またあの頃の泥水に突き落とされそうで恐怖を感じた。
「あっ!」
トイレの入り口から声が聞こえた。皆が振り返ると男子生徒が一人こちらを見ている。
翔太は助けが来たんだと安堵の顔を浮かべたが、男子生徒は見て見ぬをし、そのまま去って行った。
「べんきマン、残念だったな」狛犬は大笑いしながら言う。
翔太は失望した。自分の人生は結局こんなものだと。小学校から何も変わっていない自分に嫌気がさす。その時だった…。