第百三十八話 掟破りの工場
「意外と穴浅かったな。おかげですり傷だけですんだわ」
「そうね……早くみんなの所へ戻らなきゃ。スパイダーを止めるのよ!!」
ラッシュとアイはスパイダーの手によって地下へ落とされた。暗い通路にビー玉くらいの目があちこちに光っている。
「行きましょ、なんか不気味な感じがする」
アイに促され、二人は暗い通路をゆっくりと歩いた。時折壁の隙間から出る風に少し怯えながら進んで行くと目の先に少し開けた場所が見えた。二人は通路を抜けるとそこは人の手が届いていないような廃工場だった。周りを見渡すと鉄パイプやスクラップ品の山が積まれている。
「なんやスクラップ工場か、城の下にえらいもん作りよって」
ラッシュは空き缶を高く蹴り飛ばした。すると静寂の中に音が一層に周りに響いた。
「何すんのよ!! 見つかっちゃうじゃないの。ここはまだ敵地よ」
「お嬢さんの言う通りですね」
背後から声がしたかと思うと、二人は口を覆われ、急激に眠たくなってきた。足に力が入らなくなり、次に腰、踏ん張ろうにも腕にも力が入らない。
頭が朦朧とする中、七三分けをした涼しげな青年の顔が脳裏を霞めた。
「ようこそ、掟破りの工場へ。囚人202(アイ)と203(ラッシュ)を部屋に連れて行きなさい」
カタカタカタと車輪が回る機械音がする。その者たちはアイ達を担いで行った。




