第百三十二話 隠された真実-④
ケンジとは全く話さなかった。
次に話したのは、左側に見えたひと際大きい鉄の扉だ。閂はしておらず、ドアノブを回すと重くゆっくりではあるが、扉が内側へと開いた。
「ここだ……」
初めてではないような仕草でケンジは扉へと案内する。部屋は相変わらず真っ暗闇であり、さっきとは違って下から風が吹きつけている。
「ここは?……」
「地下水脈へと繋がる道だ。男爵の文献を読んだ時に一説として『子供がはしゃぐような楽園を越えて、我は水脈へと行きつく』と書かれている。それがここだと思う」
「思う? 逆にどうして数ある扉の中からここだと思ったの?」
リボンは心を探るような目で見つめた。
「大した事はないよ。文献にそれっぽい地図が描かれていたのを思い出したまでさ。あとはそれに自分の推理を加えただけ」
ケンジは心もない返答で行く先を見つめた。
「行く先はこの下なの?」リボンは身を乗り出して下を見た。
「気をつけろよ。そうだ、この下だ。おそらく水脈まではすべり台のようになっているらしい」
「子供がはしゃぐような楽園か……」
横のケンジが今にも突き落とそうとしそうでリボンは身がまえたが、ケンジにそういった気配はなかった。
「なぜ、ヒーローになったの?」ケンジは突然問い正した。
「えっ!?」
「シャボン玉の力を見た時、もしかしてと思った。他の人達もヒーローだったし。ヒーローが身近にいるなんて今までなかったから」
「理由は色々あるけれど、私の場合は弱い自分を克服するためと、私のような弱い人達を少しでも守るためかな」
「そっか、玲奈は強いね」
ぎゅっと手を掴まれたと思ったら、そのまま真っ暗闇の中へと落ちて行った。




