第百十七話 炎武VSひよっこ②
「転生の……カルタネット!?」
炎がパチパチと静かに、時に豪快に音を立てる。言葉のない世界が一瞬空間を埋め尽くした。
「本で見た事しかない転生武器……なりたい相手の姿を念じ、音を奏でるとその者になれるという」
ショーはゆっくりと唾を飲み込み、ゆっくりと右ポケットに入れた。『魔の書』に記載されている禁じの武器。もしかすると闘いの中で役に立つかもしれない。
周りを再度探したが武器になるものはなく、最後は床に転がっていた鉄パイプを拾い上げ、館内へと戻った。
「遅かったな……」
亮が言葉を言い終えた瞬間、猛スピードでショーへと突進した。ショーは咄嗟に鉄パイプを前方へ繰り出した。
「キンッ!!」という金属が混じり合う音が館内を包み、激しい重圧がショーを抑え込んで行く。
「この体育館はあと10分と持たないだろう。誰も知らない所でお前は死ぬ。消防車が駆け付けた時は丸焦げになっているだろう」
「そんなことさせない。君を倒し、あの時の優しい君に戻してみせる! どうしてこんな事を!?」
「翔太と戦えるように策を練っただけだ。ある人物を通してな」
「キンジョーか?」
「誰だそれ? そんな奴知らないな。あの世で教えてもらいな。意外とお前の知っている奴かもな」
亮はジャンプ一番でショーへと兜斬りをする。寸での所で交わしたが、床が真っ二つに割れ、中から炎が噴き上がった。
ショーは態勢を整え、炎をじっと見つめた。炎はゆっくりと形を変えながら、小さな鳥となりてショーへと襲った。
「極楽鳥突風炎弾!!」
手裏剣のような鋭い嘴が床へと突き刺さる。ショーは何十羽と並ぶ鳥を右へ左へ、時にはでんぐり返しをしながら交わした。
「でんぐり返しが役に立ったな。といってももう動けないか」
いつの間にか鳥がショーを床に串刺し、ショーは一歩も動けない状態となった。唯一動ける右手も鳥を追い払うのに防戦一方となっている。
「何故、こんな事をするの?」ショーは断末魔に似た叫び声を上げた。
「言ったろ? 俺の正義を守るためだ。お前よりも重みがあった、それだけだよ」
亮は炎の剣を両手で持ち、大きく振りかざした。




