第百十三話 イエロードラゴン
「何だ、今のは!?」
慌ただしく窓がカタカタと音を立てる。大きな地響きがし、立っているのもひと苦労だった。
「あれは……ドラゴンか?」スパイダーは目を細めて言った。
月の夜の影に映る黄色いドラゴン。その影はだんだんと近くなり、全体像を捉えきれなくなった。再度「ドン」と大きな地響きがし、壁がくずれる音がした。上から小さな壁の破片がいくつも落ちてくる。
「あ、危ない!!」スパイダーはくずれる破片を間一髪で避けた。その瞬間縛っていた影の能力が解け、ウルフ達は解放された。
「し、しまった!!」再度影でしばろうとしたが、蜘蛛の糸が破片で切れてしまい、縛る事が出来なかった。
「もう少しで死ぬとこだったよ。一体何があったんだ?」
ショー達は縛られた目隠しと口をほどき、上を見上げた。いつの間にか天井にはぽっかりと約5Mほどの穴があき、夜空が顔をのぞかせている。
「あっ! あれ見て!」リボンはひと際輝く星に指を差した。それは星と思っていたが、どんどんと近付き、翼をはためかせている。
「ドラゴンか? それも黄色の……まさか!?」ウルフは一度死んだ目を大きく見開かせた。
「ハッピー!!ニュー!! イヤー!!」ミュージカル風の大きな声が星空から聞こえる。
「何あれ!?」
マゴ達は声がする方を見上げた。そこにはイエロードラゴンに乗ったシルクハットに黄色いスーツを着こなし、星メガネをした何者かがいる」
「ホワイトα団副団長……ガブリエル!!」
ウルフはあっけにとられた顔をした。
「民の~安全は~確保できているよ~。勇士見せるヒーロー達よ!! 今から反撃~開始だ~」
ガブリエルはドラゴンを操り、黄色の光球を口から放った
。それは建物に当たると大きく爆発し、地面を焦がした。
「くそくそくそ~。逃げるが勝ちです、ね」
スパイダーは玉座の後ろにある隠し通路へと逃げて行った。
「待て!!」ショーとマゴはそれを見逃さず、すぐに後を駆け付けようとした。しかしウルフへと腕を掴まれてしまった。
「追っても無駄だ!! 今は俺達が不利だ。追えば次は本当に殺されてしまうぞ。それよりもガブリエルが厄介だ。彼がきて戦場が良くなったためしがない。すぐに逃げるぞ!!」
ショーとマゴはくやしそうな顔をしたが、すぐに頷き、ウルフ、リボンと一緒に部屋を出て、螺旋階段を下った。
ガブリエルの攻撃で塔は今にも崩れそうだった。




