第百八話 スパイダーの力
「痛い痛い痛い~。いきなり何するんだぢみたちは!! じぬ所だったよ」
狂いかかった目覚まし時計が鳴るかのようにスパイダーはわめいた。
「手ごたえがあったのに……なぜ?」マゴは首を傾げる。
「脂肪で奥まで入ってなかったのかも。次は……僕が行く!!」
ショーはスパイダーがもがいているのを躊躇わずに、相手の懐へ入り正拳突きを腹目掛けて放った。スパイダーは寸での所で身体を横に寝転がし、攻撃を交わした。何度も的を得て攻撃を放ったがあと一歩の所で交わされてしまう。
「君、センスないね~。攻撃が単調だよ。それじゃヒーロー園児だよ」
ショーはその言葉に反応し、怒りに満ちたアッパーを繰り出した。予想外の攻撃にスパイダーは防御をしきれず、見事に顎に攻撃が入った。
「がはっ!」
金色の歯がスパイダーから一つ飛んでいったかと思うと、スパイダーの身は大きく後ろへ反れ、地面へと叩きつけられた。
「その攻撃……88点」
スパイダーは巨体をゆっくりと起こし、顎を押さえた。何やら楽しそうに振る舞っている。
「今度は私の番だ……」
ブラック・ⅰ団のペンダントを強く握ったかと思うと、黒き小さい雲がスパイダーの周りを包んだ。スパイダーは攻撃姿勢を整えると指先から蜘蛛の糸を放ち、ショー達を捕まえようとした。
ショー達は右へ左へと身を交わしたり、柱の後ろへ隠れ、糸に捕まらないように逃げ回った。
「逃げては勝てぬぞ。ほれほれほれ、縛り上げ晩食のおかずにしてくれるわ!」
「なんの! リボン! シャボン玉の壁を作って! 奴の隙を狙い、攻撃を止める!」
「分かったわ!」リボンは人を覆い尽くすくらいのシャボン玉を何個か作り、宙へと放った。ショー達はシャボン壁を利用しながらスパイダーへと近付き、攻撃を仕掛ける猫のように様子を窺った。
いつしか地面には無数の蜘蛛の糸が落ちていた。
それぞれの糸はお互いが自立するかのように結びつけ合い、一つの巣を描いていった。




