第百一話 スパイダーの行方
門をくぐると目を見上げるような厚さ20cm以上の大扉が開かれていた。中は円形のホールになっており、所々に高装を着飾った仮面人が話をしている。
「もう始まっているんですか?」
似合わないツバメをモチーフしたメガネを揺らせながらショーは尋ねた。
「もう少しだね。一般客が今入りだしているから。僕は知人に挨拶をしてくるか待っておいてください。くれぐれも敵陣なので行動には注意を」
キンジョーは深々とかぶったハット抱えながら、奥へと進んで行く。行く先には天狗の仮面を被った二人が立っており、キンジョーは久しく手を振っていた。
舞踏会は蝶々使いのメガネを掛けるイメージがあったが、これでは仮装パーティーに来たのと大して変わらない。
「アイちゃん、どう?」
リボンはアイの目を見ていた。いつの間にかアイは緑色の眼で周りを眺めていた。
「特に邪悪な感じの人はここにはいなさそうね」
みな肩をなで降ろした瞬間、突如ショーの脚に柔らかいものが当った。
「あっ!!
」気が付くと子供が倒れており、ズボンの裾にはソフトクリームが付いている。
「お兄ちゃん、ごめんなさい。僕お母さん探していて……」
いかにも泣きそうな幼稚園児は大切なソフトクリームとショーの顔を交互に見ながら言った。
「いいよ……立てるかい? もし良かったら一緒にお母さん探そう」
ショーは園児に手を差し出し、にっこりと笑った。
「ショー善意もいいが、目的を忘れるなよ」
ウルフは鋭い眼光で辺りを見張っている。
「うん、分かっている」ショーの言葉が言い終わらない内にホール内は一瞬にして真っ暗になった。
「皆さん、ようこそ我がシャドウ城へお越し頂き、誠にありがとうございます。当主の……高倉宗助と言います」
二階壇上にライトが照らされた瞬間、白髪染めの若老人が小さく右手を上げた。
「アイ、頼んだぞ」
「今やっています」アイは緑色の眼で相手の心を読んだ。一見優しそうな老人に見えるが、今回の倒すべき敵に間違いはない。
「違う……」
「何が違うんだ?」ウルフは一時も老人の姿を眼中に捉えている。
「彼は違う人……スパイダーではない」
「影武者か?」
「なら、スパイダーはどこに?」
暗く広いホールに照らされる高倉という嘘の人物。いつしか客人の仮面がライトアップされており、奇妙な光がより心を不安にさせていった。




