第百話 仮面舞踏会
「正面から突入するって……玄関のチャイムを鳴らすの?」
「そうです。正攻法で行きます」
「そんなんで勝てるか! 自分ナメてんのか!」ラッシュは荒々しい口調で言った。
「最後まで話を聞いてください。本日古城では仮面舞踏会が開催されると聞いています。スパイダーいわば高倉はその当主として客人を招き、盛大なパーティーを催します。我々はその客人の一員として仮面を装備し、中に入るわけです」
「そのリスクは? 罠かも知れないぞ」ウルフは怖い表情で見つめる。
「百も承知です。我々以外にも客人が来るわけですが、全員ブラック・ⅰ団の団員かもしれません。それでも……」
「リスクの上に、勝利があるのですね」リボンは結論を言い、キンジョーはゆっくりと頷いた。
車はなおも山道を駆け上っていく。両脇の森が少し開けたかと思うと、目の前には二つの塔が特徴的な城が見えてくる。
「もうすぐですね。時間がありません。簡潔に作戦を言います」
キンジョーの冷静な熱意のこもった言葉に一同はみなゆっくりと頷いた。
古城の前には高級そうな車が何台も停まっていた。おおよそ三〇名ほどの人がドレスやタキシードを身にまとい、仮面を装い高貴な貴族を演じている。受付をしているのか門へと続く列がすぐに見てわかった。
「どうやって申し込んだんですか?」マゴは自分が場違いな所にいることに恐れ、身を縮めた。
「こう見えて顔が利く方でね。知人を辿って行きついたのさ」キンジョーは黒い箱から仮面を取り出し、みんなに渡した。
「服装はこのままでいいの?」アイは怪訝な顔をした。
「大丈夫です。今は富裕層の受付をしていて、後から一般の人の受付が始まります。誰でも楽しめるをモットーに主催した舞踏会ですから」
「富裕層か、一部はボディーガードもいるんだろうな」リボンはきょろきょろしながら言った。
「おそらくね。もしかしたら味方のヒーローもいるかもしれません。ですがまずは自分たちの任務を全うしましょう」
長蛇の列がだんだんと短くなり、門へと人が入ってくる。
現在時刻は午後四時。舞踏会開催時刻六時まであと二時間を切った。




