第十話 裏ヒーロー部
「そうか…そんな事があったのか。それで便器間を移動出来る能力に目覚めて…」
時寺先生は一つ一つを確認し、自分で納得していた。
「ヒーローとして小さな事でもいいから、これからも人を助けて行きたいんです。本当はもっと有名になれば大きなことが出来るかもしれませんが、僕の能力を知ったら絶対みんなバカにしていじめてくる。そうなったら僕もう立ち直れないよ。ずっと内緒にしていた事はすいませんでした…」
翔太はしょんぼりした。自分の無力さを再度認識する。
「別に怒るつもりでここに呼んで来たわけではないぞ。むしろ逆だ。歓迎しているのさ」
時寺先生は大きな手を差し伸べてきた。
「えっ!?」翔太は手を取り、ゆっくりと立ち上がる」
「実は俺もヒーローなんだ。お前と同じGランクのな。ここへ呼んだのは水飴を裏ヒーロー部へ入部させようと思っての事なんだ。」
「先生もヒーローなんですか?」翔太は目を大きくして言った。自分以外身近にヒーローはいないと思っていた。
「そうだ。俺以外にもあと二人部員がいて、俺が部の顧問をしている。みんなワケありの能力者だ。同じ境遇になっているから、悩みも打ち明けれるさ」
翔太は目の前が大きく広がるように感じた。自分一人で悩んでいた事が解決するかもしれない。そして友達が出来るかもしれないと…。
「とりあえず、ここにいても仕方ない。放課後に職員室に来てくれ。そこから話をする」
学校の昼休みを終えるチャイムが鳴る。二人は音楽室から出て行った。