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メイドと騎士シリーズ

逸る心と勘違い

作者: ゆとり

※「弁当に乗せた想い?」の続編となります。

現在の時刻は午後7時。


仕事がようやく終わり、只今帰宅中です!

私は王宮の下っ端メイドをしている、リリアと申します。


今日はとてもラッキーな一日でした!

お弁当は何故かタダで貰えましたし、貰い忘れていた箸は騎士様から頂くことができました。

丁度箸を持っているなんて、まさかお弁当狙い!?と、最初に騎士様を疑ってしまい、非常に申し訳ないことをしました…

今度すれ違った時に、改めて御礼をしておかないと。


―――――

王城を出て、王都の中心を貫く大通りをのんびりと歩きます。相変わらず、夜の王都は仕事終わりの方々で賑わっていますね〜。

私の住むアパートは、大通りを30分程歩いた場所にあるので、いつも晩ごはんの材料を買いながら帰宅します。今日の夜ご飯は何にしようかな〜。


野菜を売る屋台の前で立ち止まって思案していると、突然、誰かに肩を叩かれました。


「ひゃあ!」

「うおっ!」

「っ、騎士様!」


びっくりして後ろを振り向いたら、昼間お世話になった騎士様でした。


「すまない。驚かせてしまった」

「いいえ!申し訳ございません!」

「いや、いいんだ……買い物か?」

「はい。仕事が終わったので、夜ご飯の材料を買いに。騎士様は?」

「あぁ……帰宅中だ」


そう言って視線を彷徨わせる騎士様を見て、昼間の御礼を述べました。


「あのっ、騎士様、今日は本当にありがとうございました!とても助かりました!」

「あぁ、貴女の手助けが出来て良かった」


そう言うと、騎士様は優しく笑いました。



…うわぁぁあ!今日初めてお話ししましたが、改めて良く見ると、この騎士様、非常に整った顔をしています。美形というやつですね。

そんな騎士様の微笑みを間近で見てしまいました!破壊力抜群です。とりあえず急いで顔を下に向けました。ううっ…多分、顔真っ赤です。



「あの、えっと、そろそろ失礼しますね!」

「え」



そう言って私は、逃げるように騎士様と別れました。



―――――

あ〜、恥ずかしさのあまり、家まで走って逃げ帰ってきました。最初は全力疾走だったのですが、途中で疲れて最後はほとんど歩きと変わらないスピードになりましたが……はあ、疲れました。


よく考えたら、いくら恥ずかしかったとは言え、急に走って逃げるなんて失礼ですね……騎士様には申し訳ないことをしてしまいました。


これはお詫びをしなければ……この前箸をくださったから、恐らく騎士様はいつも食堂のお弁当を買って食べているということですよね……


あっ!そうだ、今度会った時、手作りのお弁当を渡しましょう!自分で言うのもなんですが、料理を作るのは得意です!


よし、そうと決まれば、早速お弁当の仕込みをしましょう。ついでに夜ご飯の準備も!



「ああっ!夜ご飯の材料!」



―――――


突然走り去っていく彼女を、俺は呆然と見送った。


「しまった……」




仕事が終わり王城を出た所で、大通りを歩く彼女に気が付いた。ようやく今日彼女と初めて話すことができたばかりだった為、また話し掛けていいものか迷い、しばらく後ろに付いて歩いてしまった。


いかん…これでは自分が不審者だ。

うむ、いくら王都の治安が良いとはいえ、彼女一人で夜道を歩いて帰るのは危ないだろう…


と理由をつけて、丁度立ち止まった彼女の肩を叩き、声をかけた(つもりだったが、声は聞こえなかったようで驚かせてしまった)。



彼女を家まで送りたいと切り出すタイミングを考えていると、再び昼間の御礼を言われ、自分が用意していた弁当を美味しそうに食べる彼女の様子を思い出した。

…思わず、にやけてしまっても仕方が無いだろう。



俺の顔を見た彼女は、少し俯いて顔を隠し…突然、走り去ってしまった。



ここで最初に戻るが。


急に別れを告げられて、俺は動くことができなかった。


「しまった……」



やってしまった……彼女が逃げたのは、自分のだらしないにやけた顔を見せてしまったからだろう。


結局、彼女を送るという目的を達成出来ず、とぼとぼと帰宅したのだった。



―――――

次の日の朝、リリアは手作り弁当を持って、例の騎士様を探していた。


「昨日はこの廊下ですれ違ったはずだけど……あ!」



向こうから騎士様が来ました!

何だか落ち込んでいるような気がしますが……

何か悪いことでもあったのでしょうか。



「騎士様!」

「……っ」

「あの、昨日は突然帰ってしまい申し訳ありませんでした!」

「いや……」

「お詫びにお弁当を作ってきたのですが、良かったら食べてください!」

「……こちらが全面的に悪かった……え?」

「お弁当です、どうぞ!」



騎士様の顔を見て、昨日の微笑んだ顔を思い出した私は、また顔が真っ赤になる前にお弁当を渡して、その場を去りました。




―――その日、食堂で美形の騎士が最高の笑顔でお弁当を食べる様子が多数目撃され、数日間食堂の売上が倍増したとか。


『微笑み=にやけ顔』からの勘違いと、ちょっと進展?なお話でした。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 良いですねぇ…… このメイドと騎士コンビが好きすぎます。ツボです。続きが読みたいです。ちょっとなんだかいやかなりニヤニヤが止まりませんでした。かわいいですねぇ、この2人。
2013/02/10 12:13 退会済み
管理
[一言] 短編としてよくできていると思います。 これからも執筆活動を頑張ってください。
2013/01/07 21:36 退会済み
管理
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