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〜戦国不精で何が悪い〜米作りとか面倒なのでやめました ―神様のチート、無意味でしたよ。人口比10対1の東北なのに、なぜか天下が見えてきたかも―  作者: 犬童好嬉


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第12話 後日談02

おっと! 嬉しい! 日間ですが、ランキング入りしてました!

とは言っても、漸く100位以内なのですが。。

それを記念して、

本日はこの話を追加します!

父の部屋に入ると、静かに座を示された。床はきちんと整えられ、脇には文机と巻物が置かれている。


余計なもののない空間は、主の性格をそのまま映しているようであった。


貴丸はその前に進み出ると、何の気負いもなく腰を落とし――そのまま横に寝転がろうとした。


その尻めがけて、”ぱしり”と軽い音がした。


「父と話すのに寝転がろうとする者があるか!」


即座に手が飛び、尻を叩かれた。


「この息子は本当にどうしようもないな……」


慶久は呆れたように呟いた。


間髪入れず、貴丸が口を開く。


「この親にしてこの子あり、と申しますゆえな」


ぴくり、と慶久の眉が動いた。


一瞬、何か言い返そうとした気配があったが、ぐっと言葉を飲み込む。


貴丸はそれを気にも留めず、仕方がないとばかりにあぐらをかいて座り直した。


だが、それで収まる性分でもない。


傍らにあった脇息を足で引き寄せると、自分の脇へと置き、そのまま体を預ける。完全にくつろいだ姿勢である。


それを見て、慶久は明らかに何か言いたげな顔をした。だが、ただ一つ、低く言葉を落とす。


「……なんだ、その態度の大きさは」


「親の因果が子に報いとも申しますゆえ」


即答だった。


慶久は、ついに苦い顔を隠さなくなった。


やがて一つ、深く息を吐く。


「まぁ……よい。富岡の件だ」


空気がわずかに引き締まる。


「焼き討ちの詳細を聞かせよ。相馬の殿にも報せねばならぬ」


静かな声だが、その内には重さがある。


貴丸は一瞬だけ視線を逸らした。本当のことを話すか、それとも適当に取り繕うか――わずかな逡巡。しかしすぐに言い訳を考えるのも面倒だと思い、肩を落とす。


(……まあ、いいか)


観念したように口を開き、事の次第をそのまま語った。


城下へ入り込んだこと。流言を流したそうとしたこと。そして焚火をして魚を焼いて食べたこと。


うとうとして寝たこと。起きたら、周囲に火が引火していたこと。


そして富岡の兵に追いかけられて逃げ延びたこと。その後火の勢いが凄かったので、もしかしたら延焼したのかもしれないということ。


すべてを、飾ることなく、淡々と。


話し終え、わずかに間を置いてから、貴丸は付け加える。


「――というわけです。私は日頃の行いが良いので、神様が何かが手を貸してくれたのやもしれませぬ。怪我の功名……いや、焚き火の功名、といったところですな」


軽い調子だった。


慶久はしばし言葉を失ったまま、息子を見つめる。


「……まさか、本当に五里以上(約二十キロ)も離れた富岡の城下まで行くとはな」


呆然とした声が漏れる。


「あれは冗談のつもりで言ったのだがな……」


「ですが、事前に親父様には申し上げておりましたよね?」


さらりと返される。


慶久は口を閉じ、わずかに頷くしかなかった。


「……確かに、そうではあるが…」


認めざるを得ない。


だがすぐに顔をしかめる。


「しかしだな。まだやっと十になったお前が、敵の本拠に乗り込み、結果として焼き討ちを成功させるなど……正気の沙汰とは思えぬ武功だぞ」


その声音には、驚きと呆れと、わずかな誇りが混じっていた。


そして続ける。


「相馬の殿に報せれば……おそらく、お前に興味を持たれるであろう。挨拶に来いと呼ばれるやもしれん」


一瞬の間。


貴丸は即答した。


「あ、それ、パスで」


「……は?」


慶久の顔が固まる。


「ぱす、とは何だ?」


聞き慣れぬ言葉に眉を寄せる。


「あー、面倒なんで、そういうのはいいです。間に合ってます」


あまりにも軽い。


慶久は思わず身を乗り出した。


「何を言うか。それは名誉なことだぞ。まだ元服もしておらぬお前が、殿に呼ばれるやもしれぬのだ。誉れではないか」


だが貴丸は、相変わらずの調子で、某ひろゆきばりに言葉を返す。


「でも、まだ決まったわけじゃないですよね? それってあなたの個人的な予想ですよね?」


言葉が、止まった。


「あなたって…………」


慶久は口を開きかけ、そのまま閉じる。


否定できない。


しばしの沈黙が落ちた。


その静けさの中で、貴丸だけが、何事もなかったかのように脇息に身を預けていた。


座敷に張り詰めていた空気を、乱暴な足音が唐突に打ち破った。


廊下を踏み鳴らすような音が近づき、次の瞬間――


ばしん、と襖が勢いよく開かれる。


「おい! 貴丸! 昨日は楽しかったな! 今日は何をするんだ!」


声と同時に飛び込んできたのは希丸であった。息を弾ませ、顔を輝かせ、まるで何事もなかったかのような無邪気さである。


その背後から、やや遅れて叔父の慶光が追いすがる。


「おい、希丸! 殿の部屋に無礼であろうが!」


言いながら、ぽんと軽く尻を叩く。


「いってぇ!」


希丸は不満げに振り返るが、その勢いは止まらない。ずかずかと床を踏み、遠慮なく貴丸の隣へと腰を下ろした。


その様子に、慶久は一瞬だけ目を丸くしたが、すぐに口元を緩める。


「よいよい。童のすることよ」


軽く手を振って咎めを流す。


慶光はそれでも気まずそうに一礼し、静かに座敷へと入ってきた。姿勢は正しているが、どこか疲れが滲んでいる。


その空気を見て、貴丸は何気ない調子で口を開いた。


「昨日の富岡の城下でのことですが――希丸も、なかなか働いておりました。あとで褒めてやってくだされ」


横に座る本人は、にやりと得意げに胸を張る。


慶光は一瞬だけ目を細め、それから深く息を吐いた。


「ほんに……危ないことをしおって」


眉間に皺を寄せる。


「昨日はな、希丸と、ワシも……妻にこっぴどく叱られたわ」


渋い顔で肩を落とす様は、どこか戦場帰りの武士というより、家に帰った途端に叱責を受けた男のそれであった。


貴丸はそれを面白そうに眺めながら、淡々と続ける。


「まだ日向館が本当に燃えたかは定かではありませんが、そこに同行していた以上、希丸の働きも立派な武功でございましょう」


軽い口調ではあるが、言っていることは筋が通っている。


慶光は腕を組み、少し考えるように顎に手を当てた。


「……たしかに、そうかもしれぬな」


やがて小さく頷く。


「今、細作に確かめさせておる。昼過ぎには、ある程度の様子は分かるであろう」


その言葉に、座敷の空気がわずかに引き締まる。


火がどこまで広がったのか。城はどうなったのか。


それ次第で、ただの騒ぎか、あるいは――戦の火種となるか。


希丸だけはそんな気配など意に介さず、隣でわくわくとした様子で貴丸を見上げていた。


「なあ、貴丸! 遊んでくれよ。今日は何するんだ!」


ぐいぐいと引くその手は遠慮がない。貴丸は半ば押し倒されるように縁側へと連れ出され、面倒そうに肩を落とした。


「……遊びか」


少し考える素振りを見せ、それから気の抜けた声で続ける。


「なら、じゃんけんでも教えてやる」


「じゃんけん?」


希丸が首を傾げる。


ちょうどその頃、朝の勉めを終えた敦丸もこちらへやってきた。


まだどこか真面目な顔つきを崩さぬまま、しかし興味ありげに二人の様子を覗き込む。


貴丸はいつもの縁側に移動して、ごろりと寝転がると、片肘をつき、左手だけをだらりと持ち上げた。


「ぐーが石、ぱーが紙、ちょきが刃物だ。掛け声に合わせて手を出す。勝ち負けは――まあ、やってみれば分かる」


気のない説明であったが、子供にはそれで十分だった。


「じゃん、けん……ぽん」


気の抜けた声とともに、貴丸の手がゆるりと動く。


ぐー。


「おお!? なんだこれ!」


「もう一回! もう一回だ!」


希丸が目を輝かせ、敦丸も身を乗り出す。


「じゃん、けん……ぽん」


今度はちょき。


「あっ、負けた!」


「やった! 勝ったぞ!」


二人の声が弾む。


貴丸は寝転がったまま、顔すら上げずに手だけを動かす。


ぐー、ちょき、ぱー――ただそれだけを繰り返しているだけだが、敦丸と希丸は一喜一憂し、まるで祭りでもしているかのような騒ぎようであった。


春の光が庭を照らし、柔らかな風が吹き抜ける。笑い声が縁側に広がり、どこかのどかな時間が流れていく。


やがて日が高くなり、昼餉の支度が整う。


食事を終え、膳が下げられた頃であった。




廊下を足早に進む気配があり、控えめな声が慶光を呼ぶ。細作からの報せであった。


慶光は文を受け取り、目を走らせる。読み進めるにつれ、その表情が徐々に引き締まっていった。


「……来たか」


低く呟く。


慶久もそれを見て、静かに問いかける。


「どうであった」


慶光は一度息を整え、それから報告を述べた。


「富岡の日向館は……半焼とのこと。城も城下も混乱の最中にあるそうだ」


座敷の空気が変わる。


「焼け死んだ者は出ておらぬが、騒ぎは大きい。相馬が動いたのではないかと疑われ、領境では警戒が強まっておる」


さらに続ける。


「ただし……すぐに攻めてくる様子はないようだ」


慶久が眉をわずかに動かす。


「理由はなんだ?」


「米の蔵がやられておる。城に隣接する備蓄の倉が、特に燃えてひどい被害だそうだ。田植えも近い。この状況では、軍を動かす余力はあるまい」


言葉を聞き終え、慶久と慶光は顔を見合わせる。


一見すれば、戦果としては上々である。城と城下を乱し、兵糧に打撃を与えたのだ。


「……やりおる」


慶光が小さく呟く。


だが、慶久はすぐに顔を曇らせた。


「しかし……」


視線を落とす。


「田植えの後か、あるいは収穫の後か……報復は来るであろうな」


静かに言う。


その声音には、喜びと同時に、先を見据えた重さがあった。


再び座敷に沈黙が落ちる。


その中で、ふと横を見ると――


当の貴丸は、満腹と陽気にあてられたのか、縁側に横になっていた。


目を細め、うつらうつらと舟を漕いでいる。先ほどまで手だけ動かしていた名残か、指先がわずかに動いていた。


戦の火種を撒いた張本人とは思えぬ、あまりにも気の抜けた姿であった。


戦国時代の話は、

実在している人物や時代背景もあるので、

こんな文章でも調べ物が大変なんです。。

今現在の年代をはっきりとさせちゃうと、

矛盾があるでしょ的なことを言われるのですが、

一応1515〜1520年前後の話として書いています。

まぁ、かなり改変してますが、、

大目にみていただければと。。

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