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『魔力アレルギー』の病弱令嬢は『魔力なし』の辺境伯爵に、心も体も健やかに愛し抜かれました  作者: 藤崎まみ


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評価、ブクマ、リアクションありがとうございます。


雪の降らない時間が増え、昼の日差しも少しずつ強くなっていった。


雪解けの季節が来ると、屋敷の庭園では植物が雪を押し上げて新芽を出す。並々ならぬ生命力に、ステラは目を輝かせた。


まだ雪かきで集めた雪や日陰にはあちこちに雪の壁が残ってはいたが、確実に春が近づいていた。


ヴォルフラムはまだ雪が溶けきっていない森に兵士を連れて、腹を空かせて動き出した魔物を討伐に行っていた。


雪解けから繁殖の春が深まる頃までヴォルフラムは、森で暴れ回る魔物の対応でとにかく多忙の予定だった。


屋敷に残ったステラは冬の間に壊れてしまった公共施設や足りない物資の発注、春になったらやってくる二人の兄の部屋を用意するなど、バタバタした毎日を過ごしていた。



***



すっかり雪がなくなり、春の陽気な風が吹く頃。


ステラの長兄アルベルトと次兄のエリックが、一週間の長旅を経てアイゼンベルク領に訪れた。


屋敷の玄関で華やかなドレスを身につけたステラが、完璧な淑女の礼を取る姿に、兄二人は呆然と立ち尽くしていた。



「ようこそ、お越しくださいました。アルベルトお兄様、エリックお兄様。ご無沙汰しております」



ゆっくり顔を上げ、にっこり笑いかけるステラの頬は久しぶり家族に会えた喜びで上気し、輪郭は健康的にふっくらとしている。


華奢な体つきは変わらないが、かつての痩せすぎて青白かった面影はもうない。

健康的に肉付きがよくなり、女性らしい丸みも感じられるようになっていた。


生気に溢れるステラの姿に、随分長いことやつれた具合の悪い様子しか見ていなかった兄たちは驚きを隠せなかった。


アルベルトがヨロヨロとステラに近づいて、そっと肩に触れる。



「…お前、本当に()()ステラか…?」

「はい!手紙でも報告した通り、三食おやつ付きでみるみる元気になりました」

「…ううっ!本当によかった…」

「まぁ、エリックお兄様ったら」



エリックが金色の髪を振り乱し、天を仰いで両目を押さえているのに、口に手を当てて笑みをこぼすステラ。


目に涙を溜めて、ステラに抱きつくエリック。



「仕方ないだろ…!留学先で急に辺境の地に輿入れしたなんて手紙がきた俺の身にもなってくれよ!

ステラ…、本当に元気になってよかった」

「ふふ、会うのは3年ぶりですね。お変わりなくてよかった」

「こら、エリック。もたれかかるな。頬擦りするな。ステラはもう辺境伯夫人なんだ」



ベリッと弟をステラから引き剥がすアルベルト。

よく似た年子の兄は、性格は見た目と反して真逆に近かった。


真面目で堅実な長兄アルベルトと自由奔放でヤンチャな次兄エリック。年の離れたステラを可愛がる優しい自慢の兄たちだった。



「お話中、失礼します。執事のヘクターと申します。

積もる話もありましょう。お食事の支度が出来ております」

「アルベルト・ベルシュタインだ。滞在中よろしく頼む」

「同じく、エリックです!お邪魔します!」



まるで友達か親戚の家に遊びに来たようなエリックの挨拶に、あながち間違っていないかとステラは声を出して笑った。



「屋敷のシェフの料理はとても絶品なんです。お兄様たちにもずっと食べさせたかったのです。こちらへ」



出迎えに来ていた後ろに控えているメイド達の奥にシェフのバルトが帽子を取り、顔に大きな傷痕をつけた顔でにっこりと笑って会釈をした。


特に容姿に怯まずアルベルトやエリックが手をあげ、挨拶に答えた。



「あぁ、送って頂いた野菜や酒も美味しかった」

「オレが家に帰ってきた時には食べ尽くされてたから、めっちゃ楽しみにしてきた」



客人がステラの兄弟とは聞いていたが、おもてなしを任されたメイドたちは、王都の侯爵子息たちにかなり緊張していた。


しかし思っていたよりも、ステラに似た優しい空気をもつ客人達に、少しだけ安堵する。

練習した通り完璧なやるぞ、とそれぞれ気合を入れていた。




***




「いや。本当にお世辞抜きで、とても美味しい食事だった。ステラが再三手紙で言っていた好物の搾りたてミルクは格別だった」

「ありがとうございます…!皆も喜びます」

「ステラ、いいもの食べさせて貰えてよかったな…。グスン」

「エリックお兄様ったら、また…!」



食後のお茶を貰いながら、暫し雑談をしていた。


ステラはアルベルトやエリックのアイゼンベルク領内の、あらゆる質問にスラスラと答えながら、近況報告をしていた。


アルベルトは、ステラが短時間でよく勉強していることを感じ取っていた。部屋の隅に控えていた執事のヘクターも会話の邪魔をせず、ステラに補足する形でフォローを入れる敏腕だった。


…父が幼い頃からアイゼンベルク辺境伯を高く評価しているのを知っていたが、なるほど階級に恥じない領地運営をしている。



「…ところで辺境伯爵殿は、帰宅は夜かな?今日も森へ魔物の討伐へ?」

「はい。春の繁殖期になる今が一番討伐で忙しいそうで、もう屋敷を出てから四日経ちます」

「え、四日…!?ずっと野営して、魔物がウヨウヨいる山ん中で闘ってるってこと?」



ステラが凛とした表情で背筋を伸ばし、口を開く。



「ヴォルフラム様は大丈夫です。とても強いお方です。今も前線に立ち、領民とこの国を魔物から守っています」

「…ステラ、お前」

「……」



その自信は、約一年間アイゼンベルクで関係を作ってきた、ヴォルフラムへの信頼から来るものだった。


ステラは、初夜の次の日に起きた朝、ヴォルフラムが討伐に出ていた日を思い出す。危険と隣り合わせの生活に狼狽えていたのが懐かしく、内心笑っていた。


アルベルトとエリックは、ステラの落ち着きように、まだ見ぬヴォルフラムへの深い愛を感じていた。

二人の記憶の中の、元気だった頃の無邪気な10歳の少女だったステラが、夫を持つ一人の大人の女性として生きる姿に驚いていた。


エリックは言葉すら出てこなかった。


…女の子って、少し見ない間にこんなに大人になるものなんだ。


なんだかひどく寂しい。

けど、それと同じくらい誇らしかった。



「きっと明日の昼頃か夕方には帰られると思います。

それまでは、私が領内の案内をしますね」

「うん!羊と牛を見に行って、ついでに木登りしようか」

「…エリック…」



全く成長の見られない弟にアルベルトは、小さくため息をついた。





お読みいただきありがとうございます。


評価、ブクマ、リアクション励みになります

よろしくお願いします。



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