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『魔力アレルギー』の病弱令嬢は『魔力なし』の辺境伯爵に、心も体も健やかに愛し抜かれました  作者: 藤崎まみ


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評価、ブクマ、リアクションありがとうございます。



「ヴォルフラム様…!私、自分でやれます」

「いいから。後ろ向け、冷めちまうぞ」



火傷のような症状のステラは、今日だけはシャワーを控えて魔道ケトルで沸かしたお湯で体を拭こうと思っていた。


冬の間でもベルシュタイン侯爵家から送られた温水器のお陰で、熱いシャワーが浴びられるのはかなり快適な冬の生活になっていた。


左手だろうが自分でできると言うステラに、サッとシャワーを浴びてステラの寝室に乗り込んできたヴォルフラムによって攻防が繰り広げられている。


頼みの綱の侍女ハンナすら、含み笑顔で下がってしまった。



「服、ひん剥いてもいいんだぞ」

「…さては少し、楽しんでますね」

「ステラはあまり俺を頼ろうとしないからな」

「そんなこと…!…では、後ろだけ」



ヴォルフラムが部屋の灯りを絞って暗くする。これなら構わないだろうとばかりに見てくるため、諦めて後ろを向いて服を脱ぐステラ。


ヴォルフラムはステラの背中を、湯気が出ている手ぬぐいで拭きあげていく。

あばらが浮いていた背中は、今では陶器のように艶やかで、掴んだら折れてしまいそうな腕も健康的に脂肪がついて柔らかい。


すっかりステラが健康的になったから、ポーションさえ飲んでいれば日常生活には問題がないと思い込んでいたヴォルフラム。


安全だと思っていた屋敷内にステラを傷つける物があるのは、屋敷を空けがちのヴォルフラムは気が気じゃなかった。



「毎年冬はこうして沸かしたお湯を取り合って体を拭いて凌いでたんだ。…今年はステラのお陰で熱いシャワーが浴びられる」

「…お礼はお兄様たちに。私は特に何もしてないんです」

「…珍しいな。またネガティブなステラになってる」

「わっ!」



グイッと後ろから華奢な体を抱きかかえ、無理やり後ろを向かせて唇を重ねるヴォルフラム。

痛めた右手に触れないように細心の注意を払っていた。


そのまま、ゆっくり向き合って抱き合うとどちらともなくキスを深めていく。



「だって、ヨルグも…。私のせいであんなにしょげてしまって…」

「なら早く手を治して、元気なところを見せてやろう。

…治癒魔法は使わない方が良さそうだし、明日ヨハンの爺さんのところに連れてってやるよ」

「ん、お願いします」



雪が降り積もるなか、高齢のヨハンを呼びつけるのは忍びないし、ヴォルフラムがいれば大丈夫だろうと明日診察に行く約束をする。



「安静にさせてやりたいが。…いいか?」

「…ほんの指先の小さな怪我ですよ。大丈夫です」



そっとステラをシーツに押し倒しながら、耳元で囁くヴォルフラム。


ゾクッとしたものが背筋に走り、重なった体にドキドキと鼓動が早まっていくステラ。右手を庇いながら両手をそっと逞しく太い首に腕を絡めた。


深い雪に閉ざされた真っ白なアイゼンベルク領。雪が周りの音を吸い込んで、風が弱まる夜はしとしと降り続ける雪の音もせず静まり返っていた。


…まるでこの世に二人きりのようだった。


右手の痛みなど遠い彼方へ消え去るほどの情熱に身を委ね、ステラはヴォルフラムの全てを受け入れ、二人はついに最後まで愛し合う幸福を噛み締めた。




***




朝、いつも通り少し遅めにステラの寝室を訪れたハンナ。既にヴォルフラムが起きていて暖炉に火を入れていた。


いつもならダラダラと寝台で絡み合っているのに、さすがに怪我したステラに配慮したのかと納得していた。



「…あー。ハンナ、申し訳ないが、朝食ここに持ってこられるか?」

「勿論、構いませんが…。ステラ様はお加減が?」

「…ついうっかり、やり過ぎちまって、その」



ぐったりと寝台で横になっているステラに驚くハンナ。

盛り上がったせいで、ステラは腰砕けになっていた。



「昼には起き上がれるだろ、…多分」

「ヴォルフラム様!体力と体格差をもっと自覚して、配慮してください!」

「…すまなかった」

「おはよぉ、ハンナ〜。…世の奥方って大変なのね」



もっと体力つけなくちゃ、と力なく張り切るステラ。


あわあわとステラに手を焼くハンナに叱られて、昨日のヨルグよりも大きな体で小さくなるヴォルフラムだった。




***




責任を取るとばかりにヴォルフラムに甲斐甲斐しく世話を焼かれたステラは、終始恥ずかしくてたまらなかった。

ただの体調不良ならば申し訳なさはあれど、看病され慣れていた。


ヴォルフラムの甘い熱をはらんだ眼差しや手の温度、肌の香りをを感じる度に昨夜の事を思い出してしまった。


…意識しているのは私だけなのか。


ヴォルフラムは心配そうにしながらも、どこか嬉しげでご機嫌だった。


何とか普通に歩けるくらい回復したステラは、昼過ぎにヴォルフラムの引くソリに乗せられ、診察ついでに食料の差し入れを街に持って来ていた。


運良くよく晴れた久しぶりの陽の光に眩しそうに目を細めるステラ。



「うん。丁寧に手当されておりますし、特にこのまま保湿していれば良くなるでしょう」

「ヨハン先生、ありがとうございます」



ヴォルフラムはステラの手の容態がそこまで酷くなかったことにほっと安堵していた。


防寒具のウールの手袋やドレス用の装飾手袋はいくつか持っていたステラだったが、せっかくなら新しい外出用の手袋を新調しようかと工房に相談しに来ていた。



「それでしたら革のグローブはいかがでしょう」

「わ、ファーが着いているのが可愛いですね」

「まだ当分寒いし、いいかもな。一セットくれ」

「はい!毎度あり!すぐ包んできますね」



冬の間に作っていたのか、手首にふわふわのファーが着いた革の手袋を見つけたステラ。ヴォルフラムがすぐに買ってくれた。



「ふふ、これも()()()()ですか?怒ってないですよ」

「…これは男の甲斐性だろ?」



店内で寄り添うような二人の距離の近さや雰囲気の甘さに、まるで新婚丸出しのイチャつきように、冬なのにお熱いことだと店主は生暖かい顔で見ていた。


…家に籠りきりで、娯楽の少ない冬の街では、領主夫婦の仲睦まじい様子に噂は持ち切りだった。



新婚丸出しの二人を生暖かく見守りながら、アイゼンベルクの冬は大きな災いもなく、ゆっくりと雪解けの季節へ向かっていた。







お読みいただきありがとうございます。


評価、ブクマ、リアクション励みになります

よろしくお願いします。



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