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ステラとヴォルフラムとの夫婦関係は順調で、ゆっくり時間をかけて愛を深めていた。
お互いのメリットがかち合ったゆえの契約結婚だったのに、今では二人とも相手を尊敬し合い惹かれあっていた。
ヴォルフラムは自分のような大男、魔力は無く無骨で、到底貴族令嬢に好かれるような男性ではないと理解していた。
なのに、王都育ちの侯爵令嬢のはずのステラは、現場仕事で汚れと汗まみれのヴォルフラムですら嫌な顔を見せない。
ヴォルフラムが誇りを持っている魔物討伐という荒っぽい任務すら、ステラは尊敬し、いつも帰りを待っていて喜んで出迎えてくれる。
それどころか王都では“質素”で垢抜けない辺境の地での田舎暮らしを満喫し、自ら屋敷の庭園で実った野菜やらハーブを楽しそうに採るステラ。
食卓に出される食事も在り来りなものばかりなのに、ヴォルフラムに張り切って作業を手伝った報告し、毎日美味しいと嬉しそうに食事をしていた。
…婚姻を受けてすぐは『魔力アレルギー』の侯爵令嬢が健康を取り戻したとしても、田舎暮らしに嫌気がさして王都に戻りたいと言われるんじゃないかと思っていた。
ステラがアイゼンベルクの地で、前向きにこれからも生きていこうする努力をひしひしと感じて、ヴォルフラムはたまらなくなっていた。
…ステラが眩しく見えるほどに、愛おしかった。
負荷試験で体調を崩した時には、ステラに気付かれないように必死だったが内心かなり狼狽えていた。
朝うっかり安堵でキスしてしまうくらいには、焦燥感に駆られていたし、自分に出来ることが無さすぎてS級の魔物と戦う時より緊張していたくらいだった。
…結果としてステラと心を通わせられたヴォルフラムは、今はそれだけで満足だった。
***
収穫祭を3日後に控えた日の夜。
ステラの最後の負荷試験を行っていた。
「ケトルを使っても、どこも体調に不調はないです…!」
「どうやら義父上たちは、原因が掴めたようだな」
「…随分、分厚い報告書が添付されていて、私もまだしっかり理解は出来ていないのですが。
次兄のエリックお兄様が他国で学んできた基盤を参考に、魔力を増幅させるのではなく、魔石に“圧縮”させる魔道具を作り上げたそうです」
「ふーん…?」
何も分かってなさそうな反応をするヴォルフラムを、可笑しそうに笑うステラ。
ステラの拒絶反応は、最新式魔道具に込めた少ない魔力を増幅装置によって増大させた“変質した魔力”を、浴びることによって起きていたのではないかと推察されていた。
また、魔石を使う旧式魔道具は、魔石を入れる部分がどうしても重く大きくなってしまう。
そこでルドルフたちは、魔力を圧縮した高純度の魔力を溜め込める擬似魔石を開発することに成功した。
これを“魔石電池”と名付けていた。
“魔石電池”使えば、魔力を周りに充満させることなく、省スペースで軽量化もでき、最新式魔道具に負けないスタイリッシュさも兼ね備えることが出来ると報告書に書かれていた。
「ほんの数か月で新しい魔道具を作れるなんて…ベルシュタイン家は安泰だな」
「…それが、一度凝り出したら止まらない性格なので。より軽量化や安定した魔力を込められるように、アイゼンベルク領の純度の高い魔石が欲しいと催促が…」
「ハハッ!なるほど」
侍女のハンナが実の父や兄達を“研究バカ”と揶揄する通り、かなり興奮して意気揚々と研究に携わり、ステラの母であるマリアに小言を言われているのが目に浮かんでいた。
ヴォルフラムはベルシュタイン家が魔石を求めていることを知っていたので、積極的に群れや生息地を探しては魔物から魔石を集めていた。
まだまだ力になれそうだと、内心気合いを入れているとステラがキリリとした顔で口を開く。
「ヴォルフラム様。
もしアイゼンベルク領で採れる魔石が“魔石電池”製造の要になれば、領地の資金が増えるかもしれません」
「…値上げしちまったら、ステラの実家が困るだろ?」
「今までの成果を王家に進言した結果、国費から研究予算が下りることになったそうなんです。
…なのでより良い魔道具を作ろうと気合いが入ってしまったようで」
あー、と納得したような表情をするヴォルフラム。
ベルシュタイン家のために出来る自分のすべきことが、より強い魔物を見つけたら率先して魔石を取ってくることになりそうだった。
山でひと暴れする口実が出来て、少しワクワクしていた。
…今年の兵士は粒ぞろいだったし実地経験は訓練にもなる。見回りの範囲を拡げようかと思案していた。
体調を崩すことなく、今度こそローズヒップティーを口にするステラ。
爽やかな甘酸っぱさとほのかな果実の甘みが口内に広がり、じんわりステラの体を温めた。
ほっと小さくため息をついた。
「あの、もし備蓄に余裕があればほんの少しだけ、アイゼンベルク領のチーズや芋などを実家に送りたいんです」
「…うちの特産品か?侯爵家に喜ばれるか…?」
「私が此方でどんなものを食べて元気にしているか、味わって頂きたいんです。
…本当は絞りたてのミルクが一番贈りたいくらいです」
ステラは再三にわたって、実家にアイゼンベルク領の特産物や野菜や肉が美味しいかを手紙に綴っていた。研究に集中して、ろくに食事を取ろうとしない父や兄に是非とも食べさせたかった。
ヴォルフラムは、生まれ育った地の特産物を王都の家族に是非とも食べさせたいと願うステラに胸を打たれていた。
くしゃりと表情を綻ばせて、ステラに笑いかける。
「雌牛でも送り付けてもいいんだが、春になったら二人の兄貴が会いに来るんだろう?その時のお楽しみにしてもらおう」
「ありがとうございます…!」
「…ステラ、言ってなかったが、収穫祭のメインは小麦で作った白エールなんだ。今せっせと仕込んでるよ。
ベルシュタインに出来たての一樽を贈ろう」
「白ビール…!いいですね!
収穫祭で私もお酒を飲んでもいいか、ヨハン先生に聞いてきます!」
白ビールはゆっくり熟成させると言うよりは、フレッシュさが命だった。出来たてほやほやを一週間かけて、王都へ送ればちょうど味が落ち着いていい頃だろう。
ステラが、居間に待機している医師ヨハンの元へかけていくのをヴォルフラムは見送った。
「階段、踏み外すなよ!」
「はーい」
***
「そうですなぁ。すっかり拒絶反応も出ておりませんし、グラスに一杯くらいなら大丈夫でしょう。せっかくの収穫祭にオアズケはさみしいでしょうし」
「よかった…!俄然お祭りが楽しみになりました」
「ハッハッハッ!」
成人してからも、常に体調を崩していたステラはあまりお酒を飲んだことはなかった。
アイゼンベルクの冬は厳しいので、冷え込んだ夜ホットワインやウイスキーなどを飲んで体を温めるらしい。
収穫祭で出来たての白ビールがたらふく飲めるように、収穫の日からせっせと仕込み作業が領民たちの手によって行われていた。
…ステラはもう一つ、ヨハン先生に聞きたいことがあった。
「ヨハン先生。…もう一つお聞きしてもよろしいでしょうか」
「もちろん、何なりと」
「自分でも体がふくよかになった事を自覚してます。月のものも安定して毎月訪れるようになりました。
…私は赤子を身ごもることは可能でしょうか…?」
アイゼンベルクに輿入れしてきた頃のステラは、ガリガリに痩せこけていた。
初夏から秋にかけて、負荷試験を挟みながらも4、5ヶ月かけて栄養のあるものをよく食べていた。
まだ華奢ではあったが、こけていた頬の輪郭は丸くなったし、胸も貧相ながらもふっくらとしてきたし、体全体にもいくらか脂肪が付いてきていた。
ステラは今ならば、前より子を成せるのではないかと期待していた。
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