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人手として、ヴォルフラムが領地の穀物収穫に駆り出されていた頃、顔を合わす領民ほとんど全員からステラの容態を聞かれていた。
「ヴォルフラム様、最近奥様は来られないのか?」
「最近ヨハン先生が頻繁に屋敷へ呼ばれてるから、体調が悪いんじゃないかって噂になってるのよ」
「ステラさまに羊の毛がモコモコになったの、見せたいのに〜!」
老若男女、子どもにまで、ステラステラと声をかけられ、いかに領民の関心が自分の妻に集まっているか身に染みたヴォルフラム。
『魔力アレルギー』のことをどう説明しようか悩むが、余計な噂が立ってもいけないと頭を悩ませるヴォルフラム。
難しい顔をしていては、領民がより心配を感じてしまう。
「前よりは随分元気になったんだ。ここの飯が体に合うみたいでよく食べるようになったよ。
…少し体調崩してたけど、もう大丈夫だ。
こっちの生活にも慣れてきたところだし、疲れが出たんだろ」
実際に王都から何度目かに届く試作品で、ステラは次第に体調不良を起こさないようになっていた。
今日の収穫作業も、ステラが共に来たそうな素振りにヴォルフラムは気付いてはいた。
しかし、元気で積極的な領民達に、ステラは気を遣いすぎてしまうと思った。
負荷試験で身体に負担が確実に積み重なっているはずだし、ヴォルフラムは作業で傍に居られないため屋敷に置いてきていた。
「なら、収穫祭には来られるかしら」
「今年も炊き出しするんだろ?精のつくものも食べさせてさしあげよう!」
「こんな田舎の炊き出しに来てくれるのか?
元は王都の令嬢だぞ!ハッハッハッ!」
自分の収める領地の民が浮かれているのをみて、自虐しながらも盛大にステラを持て成すんだろうと苦笑するヴォルフラム。
アイゼンベルクの“収穫祭”は、年に一度の領民のお祭りのため浮き足立つのも仕方ないかとため息をつく。
「誘ってみるけど、あんまり期待すんなよ」
ワッ!と一帯にどよめきが起きて、ヴォルフラムは肩竦めた。
…ステラがこういうの嫌がらないといいんだが。
***
夕食中、もりもりとビーフシチューを食べ進めるステラにヴォルフラムは声をかける。
「今日、屋敷に留守番させて悪かった。
もしステラの体調がいいなら、再来週の収穫祭に一緒に行かないか?」
「収穫祭…?確か帳簿でも収穫祭用の予算をかなり多めに取っていましたよね」
「はい、左様でございます。
アイゼンベルクの冬は長く厳しいですので、その景気づけに一年の実りを祝って、領民中心のお祭りをするのです」
ステラは、執事のヘクターから説明を真剣に聞き入っていた。
ベルシュタインの“収穫祭”は秋の実りを祝うため、かなり気合いの入れた領民が主役のお祭りだった。
ステラは最近負荷試験で手一杯だったため、なかなか屋敷の運営に手を出せていなかったが、この屋敷も出店するそうだ。
ハーブ入りの硬めに焼いたパンや長期保存の効く洋酒に漬けた果物を入れて焼いたシュトーレンなどを振る舞う予定で準備していた。
「昼間から食べて飲んで大騒ぎして、メインはでっかい鍋で肉やら野菜やらぶち込んだスープをみんなで食べるんだ。
田舎の炊き出し祭りみたいなもんなんだが、…ステラも来てくれるか?」
領主としてちょっとだけ顔を出す、とヴォルフラムが言いにくそうに誘ってくれる。
ステラはとても嬉しかった。
「もちろん…!喜んで行きます!」
「…あんまり、内容は期待しないでくれ」
ステラは、ヴォルフラムが領主の奥方として領民の集まる場に誘ってくれたことがとても嬉しかった。
いつまでもよそ者でいるつもりはなく、ステラは少しでもアイゼンベルク領の力になりたかった。
ヴォルフラムはステラが無理していないかじっと観察すると、今までに見たことないくらいニコニコと可愛らしく笑っているステラに言葉を詰まらせる。
…可愛い顔しやがって、ちくしょう。
ステラの食事は誰がどうみても、一日三食バランスの良いものだった。しかし貴族の家からしてみれば、一般市民が食べるような食材をステラは好んで食べた。
街の領民主体の祭りともなれば、もっと素朴なものになるだろう。それでも人柄に触れられる暖かな食事が食べられ、収穫祭はヴォルフラムにとっても、一年の中で一番好きなイベントだった。
「私、アイゼンベルクで作られたじゃがいも、ホクホクで大好きです…!」
「…そうか。ステラは、本当に欲のない女だなぁ」
「そんなことないですよ。蒸したお芋にあのミルクで作った特濃バターを乗せて毎日食べたいです…!」
ビーフシチューにゴロゴロ入ったホクホクのじゃがいもに、心ときめかせていたステラ。
アイゼンベルク産のじゃがバターを何度でも食べたいと先程から考えていた。
ヴォルフラムが声をだして笑うのを、馬鹿にされているのかとじろりと睨みつける。
「ハハハッ!…じゃがバターなら収穫祭で必ず出るぞ」
「絶対食べましょう…!」
「うん。領民たちも喜ぶ。今日も、最近ステラが街に来ないから、なんだどうしたって凄かったんだ。
…いつの間にあんなに好かれてるんだ?」
「ヴォルフラム様が、私を大事にしてくれるからだと思います」
ステラは、ヴォルフラムが領民から強く慕われていることに気付いていた。
危険と隣り合わせで、必死に領民を守るヴォルフラム。
そんな領主が受けた婚姻でやってきたステラを彼が真摯に扱っているから、領民たちもすんなり受け入れてくれた。
ステラは体調を回復させるための婚姻でしかなかったが、せっかく嫁いだのだから何か役に立ちたかった。
栄養失調と言われ、すぐに子を産めそうにもなかったステラは、領地運営を学んだり、できる限りの屋敷の手伝いをしてきた。
そんな貧相だった体は、整った体調と生命力に溢れた新鮮な食べ物で健康に近付いている。
…ヴォルフラムとの夫婦関係もいつの間にか育っていた。
「ステラ。…今夜も一緒に寝ようか」
「はい、ヴォルフラム様」
想いを伝えた日から、寝室を共にするようになっていた。
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