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翌朝、ステラが目を覚ますと真横にヴォルフラムの大きな胸板があり、ギョッと目を見開く。
…本当にずっと傍にいてくれた。
最近早朝は冷え込むため、寒さで目を覚ますことが多かったのに寄り添った大きな体が温かかった。
寝息を立てるヴォルフラムの顔をそっと覗こうと顔を上に向けると、思っていたより至近距離で、パチリと目が合った。
「…わっ!」
「体調、悪くなさそうだな…」
「んっ…!」
再び驚いてビクつくステラの身体をギュッと抱きしめて、唇を重ねるヴォルフラム。
チュッと音を立てて離れた唇を、ステラは頬を染めて見つめる。
寝起きの、しかも初めてのキスにカチンと固まるステラの頬を太い指ですりすりと撫でるヴォルフラム。
「…ヴォ、ヴォルフラム…様…?今…」
「ん?…あ、やべ。…すまん!寝ぼけてた!」
ガバリと起き上がったヴォルフラムが、まるでステラに覆い被さるように顔の横に手を置く。
一晩添い寝をして、たまに起きてはステラの様子を見ていたヴォルフラムは、寝不足気味だった。
野営で一晩くらい寝ないことは多々あるため、慣れてたが完全に今、油断していた。
…いつも通りの顔色に戻ったステラに安心して、つい唇を奪ってしまっていた。
こんな寝込みを襲うような真似をして、ステラに拒絶されていないか冷や汗をかくヴォルフラム。
ステラの目を見ると、じっと熱くヴォルフラムを見つめ返し頬は赤く染まっている。
その表情は、拒絶どころかヴォルフラムを求めているようにさえ見えた。
ゴクリと生唾を飲み込む。
「…寝ぼけて?…誰かと間違われたのですか?」
「違う。…ずっとステラとしたかったんだ」
そっとヴォルフラムの頬に両手を伸ばすステラに、吸い寄せられるように顔を近付ける。
ステラの顔の横に両肘をつけて、そっと鼻を擦り合わせる。
「私も、…大好きです。ヴォルフラム様…」
「うん…」
こんな時にスムーズに愛の言葉が出てこない自分のやるせなさを感じながら、優しくステラの唇にキスを落とした。
ゆっくり首に細い腕が回るのを感じて、広い首筋に顔を埋める。優しく細い体を閉じ込めるように抱きしめた。
…幸せだった。ヴォルフラムはステラと心を通わせられたことに胸がいっぱいになっていた。
不器用で気の利いた事はしてあげられていないが、ヴォルフラムは自分にできる限りの与えられる愛を与えたかった。
「体調はどうだ?」
「吐き気も頭痛も、どこかに吹っ飛んでいってしまいました」
「…良かったな」
「ご心配おかけしました」
頬にキスをし合って、甘い空気で二人が寝台の上でイチャついていると、コンコンとノックの音が響く。
侍女のハンナだった。
「ステラ様、おはようございます。お加減いかがですか?…失礼します」
「おはよう、ハンナ。体調はすっかり戻ってるの」
「治ったからといっても…。…昨日の今日で朝からは感心しませんよ、ヴォルフラム様」
「…流石に、前日寝込んだ奥さん襲わねぇわ…」
じろりとハンナに冷たい目で見られたヴォルフラムは、そっと体を起こし、ステラにも起きるように促す。
…口ではそういっていたが、危なかった自分に我慢するように言い聞かせていた。
***
あの後医師の診察を受け、すっかり良くなっていることを確認されたステラは、少しずつ負荷試験を進めた。
次に使ったストーブは全く拒絶反応が出ず、ポーションを飲まずに行うと少しだけ頭痛を感じたくらいだった。
いくつか使ったらこまめに結果が欲しいと言われていたので、速達で手紙を送った。
次に使ったヘアドライヤーもポーションを飲んでいれば、拒絶反応は出なかったがいかんせん魔道具が重くてステラの長い髪を乾かしきるのは難しかった。
…こんな負荷試験と関係のない感想まで送っていいのか疑問だったが、侍女ハンナの強い後押しで魔道具の使用感もついでに書き添えて手紙を送っていた。
「あの研究バカの当主様たちですよ!真っ直ぐな意見の方が絶対分かりやすいはずです…!」
「ふふ、それは貶しているのか褒めているのかよく分からないわね。
…そういえばエリックお兄様も、今回の魔道具改良に協力してくださってるみたいなの」
「隣国から手紙でのやり取りをされてるみたいですね」
隣国と行っても、距離でいえば王都からアイゼンベルク領より近いところにいた次兄のエリック。手紙の検閲はあるがステラたちよりも早くやり取りができていた。
何通目かの手紙と改良版のケトルが送られてくる頃には、すっかりアイゼンベルク領は秋真っ盛りとなっていた。
北国のアイゼンベルク領では、秋の収穫物が冬を越せる指標となる。キノコやベリー、ナッツなどの森の恵みや畑で大量に作ったじゃがいも、カブ、人参などの根菜類。
小麦やライ麦の穀物に、ワインの材料となるブドウやリンゴやナシなどのフルーツなど多種に渡る収穫の時期がやってきていた。
魔物も活気づく頃で、ヴォルフラムも朝から夕方にかけて討伐をして、忙しいながらもステラの負荷試験を見守ってくれた。
一段落した今日この頃。
普段、剣や弓を持つ逞しいアイゼンベルクの兵士たちは、鎌や軍手に持ち替えて穀物の収穫を行っていた。
たまに散歩やお出かけに馬車でステラを連れ出してくれていたヴォルフラム。黄金色に輝く畑が、荒々しい屈強な男たちの手であっという間に狩り尽くされていく様子をステラはそっと屋敷から見守った。
…もっと自分が健康で元気だったら、あの場に一緒に居られたんだろうか。
自分で負荷試験をやると言ったのに、積み重なった負荷が必ず体に溜まっているだろうとヴォルフラムに家にいるように言いつけられてしまった。
幼少の頃から留守番は慣れたものだったのに、妻として彼の横に一緒にいられないことが歯がゆかった。
領民に囲まれて、賑わいの中心にいるだろう夫のヴォルフラムを想像することしか今のステラには出来なかった。
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