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『魔力アレルギー』の病弱令嬢ですが、『魔力なし』の辺境伯様に嫁いだら、心も体も健やかに愛し抜かれることになりました。  作者: 藤崎まみ


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評価、ブクマ、リアクションありがとうございます。



ステラは父親からの手紙をしっかり読み込む。


負荷試験を行えば再び拒絶反応がでて、体調を崩すことが想定される。しかし、最新式魔道具の改良を行うには何が原因なのか突き詰める必要があった。


ステラに国を守る使命だとかいう大それた想いは、正直なかった。ただ、自分を思う父親と兄が少しでもステラの症状を無くすための世界作りをしようとしてくれている。

その事実に、断る理由は見つからなかった。


しかし、また床に臥せるようなことになれば屋敷の人間にも迷惑がかかる。

ヴォルフラムに相談してからにしようと執事のヘクターと決めて、討伐に行ったヴォルフラムの帰りを待っていた。


その間に試作品の魔道具をよく見ると、一つは湯沸かしケトルだった。普通の魔道コンロよりも、短い時間で湯が沸かせる便利グッズだ。


他にもストーブやヘアドライヤー、温水器などだった。


どれもこれもアイゼンベルク辺境伯領の厳しい冬を、ステラが過ごしやすいようにとの配慮が目に見えており、じんわりと目に涙が溜まっていく。



「まだこちらに来てから、二ヶ月も経っていないのに…。

お二人ったら、どれだけ無理をなさっているの…?」

「それだけ、ステラ様が愛されておいでなのですよ」

「…ありがとう、ヘクター。でもきっと、お母様に怒られていると思うわ」



執事のヘクターがハンカチを差し出し、受け取ってそっと目元を押さえたステラ。


どれも少しずつ、魔石から送られる魔力の供給の仕方を組み替えていると手紙に書いてあり、負荷試験の順番も事細かに指示されていた。


…つまり父と兄は仮説を立てており、裏付ける実証が欲しいようだった。



***



ステラはヴォルフラムが帰還すると、急いで玄関に向かった。出迎えを嫌がるとわかってはいたが、いても経ってもいられなかった。



「ヴォルフラム様…!」

「ステラ?どうした…っ!」

「…あっ…!」



パタパタと駆け足で階段をかけ降りて、最後の数段踏み外し、ズルッと足が滑ってしまった。

身体の大きさの割に素早い身のこなしで、咄嗟にステラの体をふわりと抱き上げるヴォルフラム。



「…ったく、おてんば娘は健在だな」

「ご、ごめんなさい。…ありがとうございます」



ドキドキと鼓動する胸を押さえながら、ゆっくり床に降ろされた。逞しい腕と少しだけ鼻についた汗の香りに、ぎゅっと胸が締め付けられるステラ。


ヴォルフラムは、久しぶりに抱き上げたステラの身体が前より確実に肉づきが良くなって、柔らかい感触と甘い香りを感じていた。


…やべ、俺臭いだろうな。



「急ぎの報告があるんだな?

…すぐ支度するから居間で待っててくれ」

「はい…」



ステラは熱を帯びた頬を隠しながら、自分の高鳴る胸に戸惑っていた。



***



ヴォルフラムはステラの話をじっくり聞き、ルドルフからの手紙に目を通す。…その顔は険しかった。



「…つまり。この負荷試験というのは、ステラの体にわざと魔力を浴びせて、どの魔道具に反応するか見るんだな?」

「はい。…それでも私はやりたいです」

「ポーションを飲んだままやれるんだろうか。医師とも相談しよう」

「また皆さんに、お世話をかけさせてしまうかもしれません。よろしくお願いします」



ステラは自分の体質に嘆いてばかりいた。

しかし今回、父と兄の協力ができれば、結果として王都に住む国民のためになるかもしれない。


だがそれは辺境の地に住むヴォルフラムや屋敷の人間には関係のないことだった。


ヴォルフラムを始め、アイゼンベルク辺境伯領に住む領民もゼロではないが、あまり高い魔力を持たない人間が多い。それなのにすぐに負荷試験を受けても良いと言ってくれた。


…ステラはヴォルフラムの包み込むような大きな包容力に感心するばかりだった。



「俺が一緒にいられる時間にやろう。出来るだけそばに居たい。

…ただ、魔道具は古いヤツしか俺は使ったことがないんだよな」

「最新式魔道具は、王都でも貴族街や上級階級の家でしか普及していませんでした。

…お父様は随分前から苦言を呈していました。

魔道具は生活を豊かにするためのもので、誰でも使える便利な道具であるべきだ、って」



しかし、貴族の世界には流行というものが強く、流行りに流行ってしまった最新式魔道具を広める仕事をルドルフは任されていた。


ベルシュタイン侯爵家に生まれた男たちは、代々魔道具の開発に着手してきた。長兄のアルベルトも昔から、いわゆるDIYが好きで木工製作や細かい魔道具をいじることを好んでいた。


次兄のエリックも他国の魔道具を研究するべく、留学を自ら希望し家から離れた地で勉学に励んでいる。


ステラは、今までお世話になったベルシュタイン家に恩返しがしたかった。



「なにか俺も手伝えることがあればいいんだがな。

…この負荷試験以外のステラ宛の手紙も、俺が目を通していいのか?」

「勿論です。…その。魔道具の研究にあたって、もし余裕があれば、ベルシュタイン家が魔石を買い付けたいと要請がありまして」

「なんだ。少しくらいなら融通しよう」



『魔力ゼロ』のヴォルフラムにとって、魔道具の製作過程なんて何も理解が及ばないため、ステラのために何かできることがないかと考えていた。


魔石なら領内だけで賄う以上が採れるため、近隣の領地にも卸している。少しくらい分け与えるのは容易かった。


ヴォルフラムが無償で送ろうと手配を執事のヘクターに頼むべく手を挙げたところに、ステラが待ったをかけた。



「いけません!

魔石はアイゼンベルク領の大事な収入源です…!無償なんて、現地で命をかけて採取した人に顔向けできません!」

「お、おぉ…。しっかりしてんなぁ」

「最近、ステラ様は熱心に領地運営について勉強なさってますから」



王都近辺以外の殆どの国民は、今でも魔石を使った魔道具を使っているため、強い魔物から取れる魔石はいつでも需要が高かった。


ヘクターもヴォルフラムに進言しようとしていたことをステラに指摘され感心しつつも、動揺するヴォルフラムを見て口元を緩めた。


ステラのいう、現地で大剣を振り回して魔獣を切り倒しているのが目の前のヴォルフラムなのだが、確かに領地の経営も辺境伯の仕事の一つだった。


…うちの奥さん、ちゃんとしてるなぁ。


ステラを見直しながらも、やはりヴォルフラムは少しでも彼女の負荷試験とベルシュタイン家の為に、何か支援がしたかった。



「なら値下げするくらいなら、構わないだろ?

アイゼンベルクに嫁いだ奥さんの実家へ、少しばかり卸すくらいなんだ」

「…それは、とても助かるとは思いますけれど…」



ステラがちらっとヘクターに目を向けると、彼は満足そうな顔をして頷いていた。


…ヴォルフラムの好意は本当にありがたかった。



医師の手配が出来次第、明日の夜から負荷試験を始めることになった。


お読みいただきありがとうございます。


評価、ブクマ、リアクション励みになります

よろしくお願いします。



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