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王都内のベルシュタイン侯爵家。
ステラが嫁に行ってから、父ルドルフは長男のアルベルトと共に最新式魔道具の改良を行っていた。
母マリアは根を詰める夫と長男を心配していた。
「少しはお休みも取ってください!
二人とも働き詰めですよ。ステラは辺境伯領でみるみる元気を取り戻したとあったじゃないですか…!」
「…あぁ、もう昼か。食事ありがとう、置いておいてくれ」
「あなた…!」
ルドルフがちらっと見たあと、すぐに手元の書類に視線を戻し手を動かすのを見て、マリアは声をあげる。
小さく息を吐いたルドルフは、確かに疲れから頭の回転が遅くて、効率が悪いかと渋々食事の置かれた机に移動する。
キッと睨みつける妻を隣のソファに座らせる。
「…なぁマリア。何も俺はヤケを起こして、魔道具をいじりだした訳じゃない」
「本当ですか…?そもそもステラがアレルギーを起こした原因の新型魔道具が、貴方のお祖父様が基盤を作ったことで責任を感じているのでは…?」
その功績でベルシュタイン家は貴族界で一目置かれていると言っても過言でない。家の立場を確固たるものにした最新式魔道具が、子孫の生命を脅かすものになるなんてまるで皮肉なことだと、マリアは思っていた。
一方、ルドルフは違う見解を持っていた。
「そう考えたくなる気持ちもわかる。
だが、私はステラが今まで頑張ってくれたお陰で、侯爵家を救う鍵となると思っている 」
「…どうして…?」
「よく考えて欲しい。最新式魔道具が普及して5、60年たった。もしこれから、都内で『魔力アレルギー』を起こす人間が増えたらどうなる」
マリアは眉間に皺を寄せて、しばし思案する。
ルドルフは最悪の未来を予想していた。
ステラのアレルギー症状の拒絶反応は、体調不良を起こして免疫が過敏になったことが原因とされている。
しかし、これから慢性的に最新式魔道具の魔力に当てられた人間が育ち同じ『魔力アレルギー』が増え続けたら、甚大な被害が及ぶと考えていた。
なぜならステラは、自身の魔力に拒絶反応は幸い起こしていない。しかし先に症例が見つかっている平民は、自身の魔力で拒絶反応が出ている。
もし高い魔力を持つ貴族内で、自身の魔力の拒絶反応をおこす『魔力アレルギー』患者が現れたら、即刻死に至るのではないかとルドルフは危惧していた。
…高い魔力を持つ王族や上級貴族が倒れたら、国の存続にも関わる。
「祖父は、最新式魔道具の長期使用における、人体の影響まで計ることは出来なかったはずだ。
ベルシュタイン家としても可能性があるなら、早急に対応しなければならない」
「そんな…!」
ルドルフの懸念事項を聞いて顔を青ざめるマリア。
そこへ席を外していた長男アルベルトが書類を持って部屋に入ってくる。
「…父さん!頼んでいた調査結果が届いた。…母さんも、ここにいたのか」
「昼食を持ってきてくれた。食べながら話を聞こうか。…どうだった?」
マナー違反ではあるが、アルベルトから報告書を受け取り目を通しながら食事を摂るルドルフ。
ステラが家を発ってから、王都内で働く平民から貴族内全ての医療関係者に、『魔力アレルギー』のような症状を持つものや死傷者がいないか調べてもらっていた。
もちろんプライバシーの観点から秘匿されている貴族もいるだろうからわかる範囲でとなる。
ソファに腰掛けたルドルフがカトラリーに手を伸ばしながら、暗い顔で口を開く。
「慢性的に、ただの体調不良と診断されている患者が10年前に比べて一割ほど増えているそうだ。まだそれ以降は遡れていないから、もしかしたらもっと患者は多いのかもしれない」
「貴族内での新生児の突然死が気になるな…。そこまで目に見えて増加はしていないが、もしかしたら子の持つ魔力で拒絶反応が起きていた可能性がある」
「……」
ルドルフとアルベルトが深刻そうに視線を落とす。もう既に被害が広がり始めている可能性に、マリアは言葉が出てこなかった。
「ステラ一人が特異的な疾患があるとは私にはどうしても思えなかったんだ。
…マリア。自分の体質がステラに遺伝したと責任を感じていたが、君のせいじゃない。
ましてやステラのせいでもない。誰にでも起こる可能性のある症状なんだ」
「あなた…、気にしてくれていたの…?」
ステラとの別れ際、妻が気にしていた事柄に、二人が責任は自分にあると重荷を引き受け合う姿を見て、ルドルフはどうしてもそうは思えなかった。
…アレルギーとは体質ではあるが、その人のせいではない。
体が物質に対して異常に反応してしまうが、それは生命を維持させる機関が働いている証拠なのだから。
両親がそっと抱き合う姿をアルベルトはホッとため息をついた。
ここ最近、仲のいい両親の空気がいつもと違っているように感じていたからだった。
「必ず、最新式魔道具のどこかにアレルギーを引き起こす原因がある。私とアルベルトの代で必ず解決しよう。ベルシュタイン家のやってしまったことは自分たちでカタをつけなければならない」
「はい、父さん」
次期当主であるアルベルトは、父の熱い思いに同意していた。
愛してやまない末の妹のためにも、今後生まれる子孫のためにも、王都内の魔道具を何とかしなければならない。そう気合いを入れていた。
懸念される調査結果が出たことを王家にも進言するべく、対策案を添えるため、“改良版”最新式魔道具の試作品の製作を推し進めていた。
ルドルフは、その試作品をステラに送り実際に不調が出ないか、魔道具を使った負荷試験をしてもらう旨を手紙にしたため、送っていた。
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