最終話 そして世界は、また回る
一ヶ月後。
都市《NEXUS》は、いつも通りだった。
朝のニュース。
満員電車。
信号待ちの列。
第二段階の事件は、公式には存在しない。
記録は整理された。
NOIR VEILは解体された。
COVENANTは再編。
AURORAは統合。
三大勢力は、ひとつの管理機構へと再構築された。
名称はない。
ただ、裏側で都市を支える“基盤”となった。
均衡は消えた。
代わりに、“共有された責任”が残った。
俺は、屋上に立っている。
あの日と同じ場所。
クロウが隣に立つ。
「存在値、安定」
セラが端末を見る。
「仮接続は解除済み。でもあなたは消えない」
ルクスがフェンスに座る。
「都市のどこにも属してない。でも、どこにもいる」
俺は苦笑する。
「中途半端だな」
クロウが静かに言う。
「それが抑止力だ」
俺はもう、“均衡の外”ではない。
だが、完全に内側でもない。
俺は。
接続を断てる。
だが今は、断たない。
都市の光を見る。
人々は何も知らない。
それでいい。
忘却とは。
消すことじゃない。
“必要なものだけを残すこと”。
セラが空を見上げる。
「これで終わり?」
ルクスが笑う。
「物語は終わるけど、世界は終わらない」
クロウが俺を見る。
「第二段階は消えた」
俺は静かに答える。
「完全にはな」
地下深層。
封印されたログ。
《Oblivion Protocol》
ステータス:待機。
都市は回る。
均衡は形を変える。
闘争は終わり、統合され、
そして――
何事もなかったかのように、また動き出す。
俺はフェンスから一歩離れる。
夜風が吹く。
都市の光が瞬く。
接続は、続いている。
俺は、微笑む。
――忘却の使徒、了。
最後までお読み頂きありがとうございました。
これにて完結…感謝




