第8話 忘却の選択
都市外縁、廃工場地帯。
鉄骨の上に、もう一人の俺が立っている。
「第一段階」
その声は、静かで、確信に満ちていた。
「均衡という概念は非効率だ」
足元から光の糸が広がる。
都市の接続が、ゆっくりと彼へ集まる。
クロウの通信が入る。
「第二段階が都市中枢に侵入」
ルクスが怒鳴る。
「情報層、三割奪取!」
セラが冷静に言う。
「存在安定値、急落。零、あなたが核にされている」
理解する。
第二段階は、俺を“基準値”にして接続を再構築している。
俺がいる限り、あいつは完成しない。
だが逆に。
俺が“取り込まれれば”終わる。
第二段階が言う。
「統合しよう」
空間が歪む。
俺とあいつの間に、接続が伸びる。
拒絶。
だが完全には断てない。
“自分”だから。
クロウが低く言う。
「三勢力、総力展開」
NOIR VEILが都市裏記録を封鎖。
COVENANTが存在値固定を強制。
AURORAが情報を遮断。
だが。
第二段階は笑う。
「均衡は、もともと私を生むための実験だった」
三勢力が止まる。
「何だと」
セラが息を呑む。
第二段階が続ける。
「三つに分かれた力は、やがて一つに戻る」
光の糸が、三勢力へ伸びる。
記録。
初期化。
情報。
それぞれの“接続”が奪われる。
均衡が崩壊する。
都市が白く染まる。
俺は歯を食いしばる。
選択肢は一つ。
“切断”。
だが対象は。
第二段階ではない。
俺自身。
自分の“存在値”。
セラの声が届く。
「それをやれば、あなたは――」
俺は笑う。
「均衡ってさ」
ルクスが目を見開く。
「……お前」
クロウが理解する。
「やめろ」
俺は叫ぶ。
《Absolute Detach:Self》
自己の定義を切断。
俺という基準値を、世界から外す。
爆発的な衝撃。
光の糸が暴走する。
第二段階の目が揺れる。
「基準値……消失……?」
接続支配が崩れる。
都市の糸がほどける。
三勢力の能力が戻る。
俺は、消えかける。
視界が白い。
存在が薄い。
だが。
三人が同時に、俺に触れる。
クロウが記録を固定。
セラが存在値を仮接続。
ルクスが情報層に強制露出。
三勢力が、俺を“定義”する。
初めて。
対立ではなく。
一つの目的で。
第二段階が崩れ落ちる。
「均衡……再構築……不能……」
光が砕ける。
静寂。
都市の夜が戻る。
第二段階は消えた。
俺は、辛うじて残った。
クロウが呟く。
「三勢力は、今日で終わりだ」
セラが続ける。
「統合する」
ルクスが笑う。
「四つ目の勢力ができたな」
俺は夜空を見る。
忘却は、終わった。
だが――
地下深層。
ログが静かに更新される。
《Oblivion Protocol:再設計完了》
何事もなかったかのように。
都市はまた動き出す。
均衡は形を変えただけ。
忘却は、消えていない。
最終話
「そして世界は、また回る」
最後までお読み頂きありがとうございました。
私はじめて英単語覚えたのバ〇ィファイトなんですけど同世代おる?




