第5話 均衡崩壊
都市《NEXUS》は、静かに壊れた。
ビルの明かりが落ちる。
信号は沈黙。
通信網は沈んだ。
だが――
混乱は起きなかった。
それが異常だった。
「情報が統制されてる」
ルクスが低く言う。
「パニックが拡散してない。誰かが“抑えてる”」
AURORAの支配網が、奪われている。
クロウの端末も沈黙。
「黒の台帳、アクセス不能。内部権限が上書きされている」
セラが静かに告げる。
「COVENANTの初期化装置も応答なし。制御が外れた」
三勢力すべてが、同時に“無力化”。
均衡は崩れた。
そして。
地下深層から、何かが“浮上”する。
都市中央タワーの巨大モニター。
本来、広告とニュースを流すはずのスクリーンに――
黒。
やがて、白い文字。
《第二段階 起動》
その直後。
人々が、止まった。
歩いていた会社員。
自転車の学生。
信号待ちの車。
動きが、止まる。
「……なに、これ」
ルクスが震える声を漏らす。
セラが目を見開く。
「存在接続の凍結……?」
クロウが否定する。
「違う。切断じゃない」
凍結。
世界と人間の“接続”を、一時停止している。
動いているのは、三勢力の幹部と――俺だけ。
「条件付きだ」
低い声が、地下空間に響く。
スクリーンが再び点灯。
そこに映ったのは。
“もう一人の俺”。
黒いコート。
冷たい目。
俺と同じ顔。
《第二段階 個体》
セラが呟く。
「……プロトタイプ」
クロウの声が震える。
「第一段階は“接続切断”」
ルクスが続ける。
「第二段階は……」
スクリーンの中の“俺”が、微笑んだ。
《接続支配》
空気が歪む。
都市の動きが、再開する。
だが違う。
人々の目に光がない。
糸で吊られたような動き。
「……操られてる」
セラの声がかすれる。
第二段階の能力。
“あらゆる接続を掌握する”。
俺が断つなら、あいつは繋ぐ。
無理やりに。
クロウが低く言う。
「均衡の最終形。三勢力を不要にする存在」
俺は、スクリーンの自分を睨む。
あいつは言った。
《第一段階、回収する》
次の瞬間。
都市全域の接続が、俺に集中する。
重い。
視界が白む。
“世界が俺を掴もうとしている”。
俺は歯を食いしばる。
切断。
全方向、同時。
都市と俺の接続を断つ。
爆音。
タワーのスクリーンが砕け散る。
光が消える。
人々が正気を取り戻す。
だが。
中央タワーの最上階。
黒い影が立っている。
“第二段階”。
俺と同じ顔で、こちらを見下ろしている。
均衡は、もう意味を失った。
三勢力が同時に、俺を見る。
初めて。
敵意ではなく。
“共闘の視線”。
セラが静かに言う。
「これは、三勢力の戦争じゃない」
クロウが続ける。
「都市そのものとの戦争だ」
ルクスが笑う。
今度は、本気で。
「面白くなってきた」
俺は、タワーを見上げる。
忘却は、俺だけじゃない。
本物は、あそこにいる。
次回、第6話「共闘」
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