その後のふたり クマとは?
今日も夫は可愛い小物を手に帰宅した。
学園からわざわざ王都を回って、学園の敷地内の邸宅に戻ってくる。
「セーレナ。本日のお土産は、これ」
手に乗せられたのは、両手に乗るくらいの端切れを縫い合わせたようなぬいぐるみ。
「あら、テディベアね」
王都に千年前の建国当初からあるテディベア専門店のもの。
テディベア、という名前と形がずっと続いている。
古いものは博物館にも所蔵され、好事家に高値で売買されることもあるらしい。
けれど、このぬいぐるみの元になった動物をわたくし達は知らない。
こんな形の動物はマグノリア王国にはいないのだから。
きっと、この地に移住して来た先達たちの故郷に生息していたのね。
「ありがとう。とても可愛いわ、フラッハ」
「どういたしまして」微笑む夫の顔もとても可愛い。
次の日、クリス王妃に呼ばれ王城へ。
手にはテディベア。
物知りなアルドー国王に由来を聞いてみようと思ったから。
クリス様の執務室へ通されると、神殿長と聖女様がいらした。
そういえば、神殿長と聖女様は建国当初の事をご存知だ。
わたくしはテディベアを取り出し、お二人にお見せした。
「わあ、まだ残っているの?」
聖女様が嬉しそう。
わたくしが手渡すと「あっ」と言いながら、花がほころぶような笑顔。
「この動物の由来をご存知ですか?」神殿長に訊いてみた。
「ああ、これはクマです」
そう言って手元にあった機械を操作して、わたくしに見せてくれた。
機械には絵が映し出されている。
⋯⋯クマ。クマ?
口にキラリと光る、ぬるっとした海生生物のような物を咥えている。
しかも違う絵の白いクマは口が真っ赤。足元には巨大な塊。
「故郷の星に生息していました。今もいるかはわかりませんが。それを模したものです」
「⋯⋯」
何がどうなってこんないかつい動物が、可愛いぬいぐるみになっているのでしょう?
「害獣でしたの?」
「そうとも言えるし、保護対象でもありましたね」
涼し気なお顔で神殿長はおっしゃる。
わけがわからない。
「ふっふー。かーわいい。何処に売っているかご存知ですか?」
聖女様がテディベアを優しく撫でてから、わたくしに手渡す。
場所を告げると、「ハルトー、買ってー」と神殿長の袖を引っ張った。
「あの、これを⋯⋯」咄嗟に口から出てしまった。
「⋯⋯だめだめ。これは大事な方からなのでしょう? 私はハルトから貰うわ。ね? ハルト」
「さっき、何か視えた?」神殿長が聖女様に訊く。
「手渡された時に、手に触れたの。髪の長い男性と、テディベアとクマのプリント見てるとこ。周りに可愛い小物がいっぱいあって幸せそう」
わたくしと夫の姿なのかしら。聖女様は未来が視えるとか。
「ああ、では」と言って神殿長が鞄からもう一つ古代機械を取り出す。
手元の機械を操作すると、何やら紙が出てきた。
「こちらをどうぞ」
口に海生生物のような物を咥えたクマの絵。
何度見てもいかつい。
テディベアと見比べる。
納得いかないでいると、
「子グマの頃は可愛いんですよ」
と、神殿長が苦笑した。
帰宅し、夫に絵を見せた。
「なにこれ、こっわー」
そう言って笑った。
最近この二人がやたら存在感が強くて、つい。
『クマ祭り後夜祭』に参加させていただきました。




