表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マグノリア王国 番外編  作者: 麻生あきら
あなたの場所 わたしの場所

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/9

03 灯火

 オイルランプの灯りに浮かぶ、よく似た母娘。

 ノアは飽くこと無く見つめた。

 この幸せを領地の息子とも早く共有したいと切に願った。


 長い時を経て囲むテーブルはとても温かかった。

 三人は食堂から居間へ移り、ゆったりとした時間を過ごしていた。




 クリスは意を決して、キアラにリボンが掛けられた包みを渡した。

 真っ赤な顔で小さな包みを差し出すクリスはまるで幼子のようだ。


「なあに?」

 紅潮した娘の顔につられて、キアラは優しい声音で言った。


 包みを受け取り、スルスルとリボンを解く。

 小箱から淡く輝く光の粒を取り出した。


「素敵。とても綺麗ね」


 クリスの手を取り、隣に腰を下ろさせた。髪を梳き、額にキスをする。

 キアラもあまり背の高い方ではないが、まだ幾分クリスよりは高い。


「かけてくれる?」

 キアラはクリスに箱を差し出した。


「気に入ってくれた?」

 言葉遣いまで幼子に戻ってしまったようだ。


「もちろんよ」




 長い間首にかけられていたグラスホルダーを「ありがとう」と、ノアに手渡す。

 キアラが連れ去られたのは七年前。作ったのはそれよりさらに二年は前だ。


 ほつれそうになる度に新しいコードに通し直したようだ。

 色もくすんで重ねた年月が刻まれているように見える。


「お疲れさま。今までありがとう」

 ノアはそっと手のひらで包んだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 夕暮れ間近の冷たい風が少年の蜂蜜色の髪を通り抜け、上気した顔を顕にした。

 彼の立つ台地の下方には、なだらかな坂道をこちらに向かって来る馬車が見える。

 三日の旅程が組まれた家族の乗る馬車だ。


「やっと、お母様に会える!」


 待ちきれぬ様子で門の外まで走り、到着までまだかかりそうにも係らず手を振りだした。

 いよいよ敷地内へ馬車が滑り込む。

 彼は玄関まで走り、キャビンのドアが開くのを待った。


「エリオット、待ったかい?」


 最初に降りてきたのは父のノア・アンバーブロウ。次に敬愛する姉クリス。

 ノアの手がキャビンに向けられ、待ち続けた母キアラが姿を現した。


「お母様!」


 堪らず走り寄るエリオット。が、途端に恥ずかしくなってもじもじと立ち止まってしまった。

 キアラはクリスの時と同じ様に、両手を広げエリオットを迎えた。


「大きくなったわね。もう同じくらいじゃないの」


 夏の休暇から三月(みつき)程しかたっていないが、すでにクリスより背が高くなっている。


「ぼ、僕はお父様似で、背が高いみたいです」


 嬉しさと思春期の照れくささで、エリオットは少し訳がわからなくなっている。


「そうね、お父様に似て格好良いわ」


 キアラはそんなエリオットに気づきつつも、ぎゅっと抱きしめて背中をぽんぽんと叩いた。


「あ、ありがとう。お母様。ずっとお会いしたかった」


「さ、皆様。お寒うございますから、中へお入りくださいませ」家令が促す。

 エリオットはキアラの右手を取り、ぎこちなくエスコートして居間へと導いて行った。




 キアラは息を詰め、ぐるりと周りを見回した。

 温かなランプの灯る部屋、家令と見覚えのある使用人たちの顔。

 そしてエリオット、クリス、最後にノア。


「ああ、やっと帰ってこられたのね⋯⋯」


 はらはらと涙が流れる。

 ノアがゆっくりと優しく包み込んだ。


「おかえり。キアラ」 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ