00 光の粒
手のひらでころころと軽やかな音。
光を受けてきらきらと輝く。
薄紅色と蜂蜜色の玉がひとつずつ。
「お父様。いかがですか?」
ノアに渡された二種類の丸いとんぼ玉。柄のない透明な作りだ。
ひと粒ずつ指で摘み、日に透かした。
クリスはノアの顔を覗き込むようにして返事を待つ。
「綺麗にできたね。キアラは派手なものがあまり好みでないから、これでいいと思うよ」
クリスの手の中にそっと渡す。
クリスの唇がだんだんと弧を描いてゆく。
「レシピは出来たのかい?」
「チェーンと、ビーズのリングトップと、この二種類のとんぼ玉で⋯⋯」
レシピ表をテーブルに置いて、クリスが早口で説明を始めた。
ノアは今にも吹き出しそうに口元を歪めてそれを聞く。
「ははは、我慢できない。クリス、わかったから、落ち着きなさい。駄目だぞ、依頼主にはもっとゆっくり話すんだよ」
「あっ」慌てて口に手を当てる。
「レシピはこれでいいんじゃないかな。キアラが戻るまでに出来上がる? 明後日だが」
「大丈夫です。今からでも取り掛かれます」
学園はすでに今年度は終了し、社交シーズンも終わった。ミニュスクール公爵家とマダム・オルタンスへの帰郷の挨拶は済んでいる。
後は荷造りと、このキアラへのプレゼントの製作だけだ。
とんぼ玉の製作は思いの外難航し、思った通りになかなか出来上がらなかった。
色の選定から模様の有無、形状まで色々試行錯誤した。
最終的に透明な薄紅色と蜂蜜色の二種類になった。
リングトップを小さな白いビーズで作り、金具で継ぎ合わせていくだけだ。
荷造りは侍女のロミにお任せだ。
「私がやっておきますから、存分に作ってください」と、ロミは胸を叩いた。
クリスにとってロミは他の使用人より年が近い事もあって、頼れる姉のような存在だ。ついつい甘えてしまう。
「出来上がったら見せなさい。キアラはなかなか注文が多いぞ」
ノアはそう言って笑った。
きっと沢山作って、沢山ダメ出しをされたのだろう。
クリスも笑う。
「ふふ。お父様を信じるわ」
いよいよキアラが戻ってきます。
『聖女の人形』の話は暗くなりがちですが、こちらはホワホワした感じで行けると思います。
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