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勇者は働きたくない!!  作者: そらり@月宮悠人


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8/9

グーテロ訪問

「ここか」


 一人の男が勇者とルーシーの住む家を訪れた。

 カウボーイのような格好をした男は、玄関の前に立つと「たのもーっ!!」と叫ぶ。


「……」


 しばらく経っても反応が無いため、再び「たのもーぅっ!!」と叫ぶ。


「……」


 あれ? おかしいな? いないのかな?

 などと考えながらも、もう一度叫ぼうとした時だった。


「たの――」

「うっせえな!!」


 勢い良く開いた玄関ドアに飛ばされた。


「……ぐふっ、良いアタックしてるじゃねぇか」

「あん? なんだグーテロかよ。今何時だと思ってんだ、朝5時だぞ」

「はーはっは! 早起きじゃないか!」

「お前に叩き起こされたんだよ!!」

「なんだ? 何事だ」


 奥から出てきたルーシーを見て、「おお! なんと麗しき乙女か!!」とグーテロはルーシーの手の甲に口づけする。


「無礼者ぉ!!」


 今度は魔術でふっ飛ばされた。


「はぁ、はぁ……。勇者よ、なんだこいつは!?」

「……。こいつはな、カリュ・グーテロといってルーシーに挑む前に逃げた男だ」

「逃げたわけではないぞ!」


 何事も無かったように会話に参加する。


「俺は魔王からただならぬ気配を感じ取ったのだ」

「それで怖くなって逃げたんだろ?」

「違う! 戦略的撤退だ!」

「同じだろ。……で? なにしに来たんだ?」

「勇者が魔王と同棲したと聞いてな」

「誰が同棲かぁっ!!」


 再び魔術でふっ飛ばされた。


「おいルーシー、そんなに魔術使って魔力大丈夫なのか?」

「ふん。この程度は問題ない。派手に見えるだけだ」

「まあいい。このままじゃ埒が明かないし、中に入ってもらおう」


 *   *   *


「で? なにしに来たんだ? 例の懸賞金目当てか?」

「勇者よ、懸賞金とはなんだ?」

「ああ、こないだ国王がルーシーを倒せた者には莫大な財を与えると宣言したんだよ」

「ほう? 随分と思い切ったことをしたな」

「といっても全世界にじゃない。当面はアリストリア国内かつギルドに所属してる奴らだけだ」

「そう! そして俺は魔王を倒して英雄となる!」

「こいつはイザとなったら逃げ出すくせに英雄願望が強いんだ。ていうかお前、今までどこでなにしてたんだ?」

「夕なぎで仕事をしていた!」

「ソロでか?」

「そうだ! 一応他のパーティにも参加してみたが馬が合わなくてな」

「だろうな」

「勇者よ、夕なぎとはなんだ?」

「あー、ギルドの名前だよ。俺のパーティもそこで結成したんだ」

「ほう」

「……ふむ。しかし、これが本当に魔王なのか?」


 グーテロはルーシーをまじまじと見る。どこからどう見ても、そこらにいる少女と変わらない。


「ああ、秘術による影響でこの姿になったようだ」

「ところで、どうしてそんな暑苦しい格好してるんだ?」

「ふん。余の勝手であろう」

「ふーん。まあいいけどな。それより本当に攻撃できないのか?」

「実際にやってみたらいい」

「ふむ。そうだな」


 グーテロは立ち上がると腰から杖を取り出す。


「む? こやつは魔法使いなのか?」

「いや、一応剣士だ」

「なに? しかし剣を持っていないではないか」

「はっはっは! 見て驚くなよ!?」


 グーテロは杖に魔力を込める。すると杖の先に光の刃が発生した。


「ほーう、これはまた器用だな。なるほど物質魔法の応用か」

「俺も今ならなんとなく分かるが、それにしても剣でよくないか?」

「はっはっ! 甘いな勇者。魔法剣の大きな利点は折れても再生可能ということだ!」

「あー、そうか。物理的な剣は折れたら廃棄だもんな」

「それと、魔力を調節すれば強度や長さを変えることもできる。魔族にも似たような技を使う者はおったが、人間の魔法剣は初めて見た」


 ルーシーの解説にグーテロはポカーンとしていた。


「ん? どうした、攻撃を試すのではなかったか?」

「いや、ルーシーに言われて『そんなやり方あったのか』と衝撃を受けているんだろう」

「なに? これほど器用なのに知らなかったのか?」

「こいつはな、器用なんだが……アホなんだよ」

「あー、なるほどな」


 しばし呆けたグーテロであったが、気を取り直して「行くぞ魔王!」と魔法剣を構える。ところが、イザ攻撃となったら魔法剣が萎びてしまった。


「な、なんだこれは!?」

「どういうことだ?」

「ふむ。魔法剣は物質魔法の応用だ、魔力を纏わせ刃と化す。つまり魔力の流れとして見ると自分の身体の延長なのだ。聖属性による畏れで魔力が萎縮してしまい、魔法剣が使い物にならなくなったのだろう」

「なんということだ! 魔法剣にこのような弱点があろうとは!」

「これは余も初めて知った。そもそも聖属性に関する情報などほとんど無いのだから当然ではあるがな」

「うーん。物質魔法は有効だと思ってたが、こういう例外もあるのか」

「そうか、まだまだ修行が足りないということだな!」

「え? いや、これは魔法の性質の話であってだな……」

「ルーシー、無駄だ。こういう奴なんだよ。こいつとパーティ組んだ時だって――」


『なに!? 魔王討伐だと! うおおお燃えてきたああああ!! 行くぞ! 魔王覚悟おおおお!!』


「魔王城がどこか分からないのに単身突撃して行って、仕方ないから後を追ったらクモスト区で瀕死になってたんだ」

「クモスト区で!? 魔族エリア外周の一番端っこではないか。新人兵士レベルだぞ……」

「思い込んだら一直線、人の話は聞かない。これでパーティ機能すると思うか?」

「うーむ、よく生き残ってるなこやつは」

「なんだか知らんが運は良いんだよ」

「はーはっはっは! 普段の行いが良いからな!」

「それはもはや才能ではないのか?」

「どんな才能だよ……。あ」


 才能と言えば、と勇者は思い出す。


「こいつの味覚が独特でな」

「味覚が?」

「クモスト区で一回だけ一緒に食べたことあるんだよ。その時は料理人が作ってくれたんだけどさ」

「料理人にケチでもつけたか?」

「そうなんだけど、その内容がな……」


『水加減が惜しいな、もう0.2グラム欲しかった。それとスープは塩が0.1グラム多いから味のバランスが崩れている』


「それは凄まじいな……」

「だろ?」

「だが、そんな繊細な味覚であれば一流レストランでも仕事があるだろう」

「それが()()()()()()()な」

「どういうことだ?」

「グーテロの味覚はグーテロ基準なんだよ。つまりただの好みでしかないんだ」

「な、なるほど……」

「そうだ! 俺が夕飯を作ってやろう!」

「なに!?」

「ほほう。興味深い」

「よし、キッチンを借りるぞ!」


 思い込んだら一直線の男は「やるぞおおおお!!」と叫びながらキッチンへと向かって行った。


「はぁ……」

「良いではないか、たまには勇者以外の味も知りたいからな」

「あー、そういや料理人を借りれそうだぞ」

「なに!? まことか!?」

「ああ。12人の魔法使いから俺の料理スキルが残念だと報告が行ったらしくてな……」

「余を倒すための監視役が勇者の料理スキルを国王に報告するとはな……」

「それで、宮廷料理人の一人が近くやって来るらしい」

「それは楽しみだ!」


 ――30分後。


「できたぞ!!」

「「おおー!!」」


 テーブルに並ぶ料理の数々はとても美味しそうに見えた。


「じゃあ、いただきます」


 グーテロの料理は何気にはじめての勇者。ルーシーと目配せして、「行くぞ」と意気込みスープを一口食べる。


「……」

「どうだ?」

「なんだろう……。不味……くはない……んだよな、うん」

「そうだな。不味くはないが美味くもない」

「なに? どれどれ」


 グーテロは自分の料理を一口食べる。すると目を輝かせて「うまぁーい!!」と叫んだ。


「これだよこれ! お前ら食え食え! 他にもあるぞ!」


 あまりに味覚が違うため、ルーシーもどんな顔をしていいか分からない様子だった。

 その後も他の料理を食べてみるが、どれも二人にはイマイチなものだった。


「はぁー美味かった! すまんな、二人の口には合わなかったか」

「気にするな、夕飯を作らなくて済んだのは助かった」

「そうか! また修行し直して来るから、それまで倒されるなよ魔王! じゃあな!」


 グーテロは自分の料理に満足して早々に去って行った。


「なんとも嵐のような男だったな」

「うーん、それにしてもなんか物足りないな」

「そうなのだ。勇者よ、確か食パンが残ってたな?」

「分かったよ、フレンチトーストだろ?」

「うむ!」


 勇者の料理スキルは壊滅的だが、一つだけルーシーが気に入ったものがあった。それがフレンチトーストである。

 卵、牛乳、砂糖を混ぜ合わせた液体に食パンを浸けて染み込ませ、バターを溶かしたフライパンで焼く。ルーシーとの共同生活で見つけた勇者の得意料理である。


「ほらよ」


 ルーシーは焼き立てのフレンチトーストにかぶりつく。


「うーまい! これよこれ!」

「はは。料理人が来たらもっと美味いフレンチトーストが食べられるだろうな」

「そうなのか!?」

「ああ。それの10倍は美味いだろうな」

「ほほう……」

「おいルーシーよだれ」

「――ハッ」


 言われてルーシーは袖でよだれを拭き取る。


「だが、ただの料理人ではあるまい」

「え?」


 ルーシーはいきなり真面目な顔になる。


「ただ料理人を送るのなら、わざわざ宮廷料理人である必要はあるまい?」

「まあ、確かに?」

「十中八九、国王(やつ)の刺客であろうな」

「そっか……毒とか?」

「あり得るが、余に毒は意味がないという事実はトルマリンから報告が入ってるはずだ」

「そうだよな」

「フフハハハハ、どんな刺客なのか楽しみだな。存分に掛かって来るがいい!」



 To be continued→

最後まで読んで頂いてありがとうございます。

応援よろしくお願いします。



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