アンサーアンサー
勇者が重体となり、魔王が魔族に連れ戻されたという話は城内で大きな話題となった。
魔王の管理が甘かったのではないか、やはり地下牢に閉じ込めておくべきだったのでないか、勇者はなぜ簡単にやられてしまったのか……。
そういった話題は最終的に議論を二分化した。
「国王陛下、今なら魔王と魔族を殲滅できます!」
「そうです! 奥の手を使えば魔族は一網打尽にできるのです!」
そう訴えるのは各大臣や重役である。今まで魔王城は魔王の防壁によって守られていた。しかし弱体化した今なら防壁は無い。魔王含めた魔族をまとめて倒せる好機だと主張する。
一方でルーシーとなった今の魔王を擁護する声も多く存在した。
「ルーシーは今や国益を生む魔法使いだ。魔法講座は着実に我が国の教育水準を底上げしている。水面下では他国からも問い合わせが来ているほどだ」
「12人の魔法使いからの報告によれば、元の魔王に戻る可能性は極めて低く、少なくとも勇者が存命である限りは貢献してもらうのが得策だ」
今のうちに魔族を殲滅するべきという、言わば過激派。ルーシーを味方につけ利用するべきという、言わば穏健派。城内はこの二派閥で真っ二つに割れていた。
「総司令官はどう思う?」
終わらぬ議論を見て国王は意見を求める。
「はっ。私は軍事を統括する身ですので、魔族を殲滅すべきと考えます。ですが一方で、優秀な魔法使いを失うことになるのも大変な痛手。あれほどの指導者は稀です。しかも魔王ゆえに千年以上教え導くことができる。つまり、我が国は数千年。あるいはそれ以上にも渡り優秀な魔法使いを輩出し続けることができるのです」
「国益の方が大きいか」
「ですが、ルーシーを抱えるためには大きな問題があります」
「問題?」
「国家魔法であるスターライト・ノヴァを封印せよ。という条件を飲まねばなりませぬ」
「スターライト・ノヴァか……」
国家魔法スターライト・ノヴァ。ルーシー曰く戦略兵器であるというそれは、一発で甚大なダメージを与えることが出来る抑止力であり、今まさに魔族を殲滅するために使うべきか否かが議論されている。
戦略兵器を保持するか、数千年の魔法王国を築くか。その判断を迫られる国王は全部投げ出して今すぐ逃げ出したい思いであった。
「そうだ、サファイアはおるか?」
「はっ。ここに」
サファイアは無許可で制約魔法を解除したことで王命違反とされたが、総司令が業務に支障が出るとして勾留はせず、処分が言い渡されるまで通常業務に従事していた。
「モルガナイトは今いるか?」
「はい。呼んでまいります」
「あたしならここに居るよー」
いつの間にかサファイアの後ろに立っていたモルガナイトは、「久しぶり、サファイアちゃん」と耳元で囁く。
「やめてくださいモルガナイト」
恥ずかしそうに離れるサファイアを見て「かわいい〜」と笑う。
モルガナイト・ホワイトは、ゆるふわピンクヘアのゆるふわ女子。とても12人の魔法使いには見えないが、実力はサファイアに匹敵すると言われている。
「来たか」
「国王陛下、どうなさいましたかー?」
「本当は別の仕事をして欲しかったんだが」
「えー? どんなお仕事ですか?」
「いや、それはまた今度頼む。今は緊急だ。あの魔法を頼みたい」
「あー、アンサーアンサーですね。了解でーす!」
アンサーアンサー。正式名称『不確かな未来の答え』は、これから先の起こり得る未来のうち、どの選択肢を選べば危険を回避しやすいかを知るための魔法である。
パールのリアルタイム立体地図と同様、これもまた最高位魔法使いが理解出来ない天才の魔法と言われている。
「それではー、この紙に選択肢を書いてください」
国王は渡された二枚の紙に選択肢を書いてモルガナイトに渡す。
「いきますよー」
不確かな未来の答えが発動すると、選択肢を書いた紙が燃えて灰になる。それを水の入ったグラスにそれぞれ溶かしていく。
「あらー、スターライト・ノヴァの方は真っ赤になったわねー、珍しい」
赤色は濃ければ濃いほどに危険信号と言われている。そして、数千年の魔法王国は……。
「あら、こっちは紫ね。だけど薄めよー」
紫は受難を表す。色が濃いほどに大変な試練が待ち受けている。逆に薄いと受難は転じて福と成す可能性がある。
つまり――
「決まったな。今後の方針は魔法王国として――」
国王が決定を下そうとした時だった。
「お、おい見ろ、魔法王国の選択をしたグラスが!」
薄かった紫は次第に濃くなっていき、みるみる内にどす黒くなってしまった。
「そっかー、数千年って書いたから、最初は薄紫だったのが時を経て変化したのねー」
「も、モルガナイト……黒って確か……」
「そうよサファイアちゃん。黒は破滅を表す。つまりこの選択肢を選ぶと、アリストリア王国は千年先の未来で破滅する」
その結果を知った一同はあまりの衝撃に言葉を失った。
スターライト・ノヴァを使えば特大級の危険が待ち受けており、ルーシーを救出して数千年の魔法王国を築こうとすれば千年先の未来でアリストリア王国は破滅する。
これでは前門の虎、後門の狼である。
「目先の危険か、千年先の破滅かを選べと。そう言うのだな?」
「これはあくまで不確かな未来の答えという魔法の結果ですからー。未来を決めるのはいつだって自分自身なんですよ。国王陛下」
ゆるふわな言い方なのに、どこか説得力と重みがある。それがモルガナイトという魔法使いである。
「……うむ。分かった」
国王は立ち上がると、全臣下へ告げる。
「国家魔法『スターライト・ノヴァ』で魔族を殲滅せよ!!」
その王命は、奇しくも勇者がルーシーを助け出すと決意を新たにしたのと同時だった。
こうして、スターライト・ノヴァが発動する前にルーシーを救出する命懸けの作戦が始まった――。
To be continued→
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第一章はこれで終わりです。
国王の決断は吉と出るか凶と出るか。
勇者は間に合うのか?
ルーシーの運命は……。
第二章をお楽しみに!
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