波乱の収穫祭 後編
「おおー!! これは美味いぞ!!」
なんだかんだでルーシーは食べまくって感謝祭を満喫していた。
「あれが魔王だなんて、ここにいる誰一人信じないだろうな」
「そうですね」
勇者とエメラルドは、はしゃぐルーシーをやや離れた所から見ていた。
「勇者様は食べないんですか?」
「ああ、一応ルーシーを見てないといけないからな。エメラルドは食べないのか?」
「食べ過ぎてしまうといけないので」
「そっか。12人の魔法使いは全員参加してるのか?」
「いえ、参加してるのは私とサファイアとパールです。他は別の任務中なので」
「そういや、会ったことがあるのはエメラルドとサファイアとトルマリン、それとパールさん、ルビーさんの5人か。半分以上は知らないんだな」
「そうですね、12人の魔法使いは全員がルーシー様攻略の命令を受けてはいますが、本来の仕事や他の任務もありますので」
「それはそうか、全員が最高位魔法使いだもんな。ちなみに皆さんはどんな仕事してるんだ?」
「そうですね……」
アリストリア王国の最高位魔法使いは、主に国の重要任務や魔法研究に携わっている。
ヒクト魔法継承者であるエメラルドは上級の頃から古代魔法について研究しており、古代魔法の技術を現代に蘇らせるなどの成果を上げている。
サファイアは総司令の副官として軍事の実務や事務作業、12人の魔法使いのまとめ役として指示伝達を。最高位魔法使いとしては属性魔法の研究・研鑽に勤しむ。
トルマリンは実像分身による諜報活動や情報統括として国内外の情報収集・整理などを行っている。魔法の研究は実像分身だけに集中している。
「――それと、パールは主に国内の不審者、不穏分子を洗い出して監視するのが主な仕事ですね」
「そういえば、パールの魔法についてエメラルドなんか言ってなかったか?」
「あー、パールの魔法は原理としては理解できるんですが、私たちからすると机上の空論にしか思えない不思議な魔法なんです」
「え? 実際にああやって魔法が使われているのに?」
「はい。街の全体図を表示することは最高位魔法使いであればできると思います。ですが、ここにいる人々の動きも同時に表示するなんてとても……」
「古代魔法の技術でも?」
「一応考えたことはありますが、どうやっても無理があるんです」
「別々の魔法を重ねて表示しているとか?」
「いえ、あれは一つの魔法です。それは間違いありません」
「そっか。すごいだなパールは」
「そうですね、天才だと思います」
上級を超えた天才もが舌を巻く天才中の天才。それが12人の魔法使いである。
エメラルドと話していた勇者は、唐突に例の勘が働いた。
「……来る!」
「え?」
「ラルドが進軍して来るんだよ!」
「今からですか!?」
「至急サファイアに――」
連絡してくれと言おうとした時だった。すぐそこに危機が迫っていると感じた勇者は空を見上げる。
「ちっ!」
ゆっくりと近づいて来るそれは、収穫祭の会場に向かっていた。
勇者はオーラを溜めると、剣を抜いて纏わせる。
「オーラブレード!!」
巨大な砲弾をオーラブレードで止める。しかし質量が大き過ぎて勇者が押される。
「くそぉっ!!」
「よく止めたな小僧ぉ!」
「えっ?」
突然現れた筋肉ムキムキの男は砲弾に向かって飛び上がる。
「デエエストロオオオオオイ!!」
大槌で一撃。砲弾は粉々に砕け散った。
しかし突然の攻撃で街は騒ぎになり、警備員が誘導する事態となった。
「ジルコン! 来てくださったのですね!」
「おうよ! サファイアからの指示でな」
「サファイアが?」
「収穫祭でなにがあるか分からんから待機しておけとな」
「さすがサファイアだな」
オーラブレードを解除した勇者は剣を収める。
「サファイアだぁ? さんを付けろ小僧」
「いいんですよ。サファイアからの要望なので」
「サファイアが!? なに考えてんだ……。まあいい、俺はしばらく警戒と迎撃に当たる。お前は魔王連れて避難しとけ」
「助かります。ルーシー行くぞ!」
「うむ。がんばれよジルコン」
「うるせぇ! ジルコン様だろ魔王!」
「じゃあエメラルドは俺と一緒に」
「はい!」
明るく返事して付いて行くエメラルドを見て「おい! お前もかよ!」と叫ぶ。
「あんのスケコマシ野郎」
ジルコンは遠くに走り去る勇者を睨見つけると、再び砲弾が飛ぶ上空へ視線を上げる。
「さあ、来るなら来いや!!」
* * *
「サファイアに連絡は取れるか?」
「はい。先程こちらに向かっていると言ってました」
「よし。サファイアが到着したら作戦を決行する」
「分かりました」
「作戦? なんだ、余は聞いておらんぞ」
「悪いな、ルーシーとはここで一旦お別れだ」
「なに?」
そこへサファイアが到着した。
「お待たせしました」
「じゃあ、頼む」
勇者がサファイアに手渡したのは制約魔法用のコントローラー。それをサファイアが操作すると「権限を移譲しました」とメッセージが流れる。
「いいかルーシー、俺は今から魔族と戦う。そのために制約魔法はサファイアに預けた」
「なんだと!?」
「すぐに戻って来る。じゃあエメラルド、頼む」
「はい!」
「おい、まっ――」
ルーシーに有無を言わさず勇者とエメラルドはその場から消えた。
「……サファイア、どういうことか説明しろ」
「勇者様は、ルーシーさんに言えば反対されるだろうからと」
「当たり前だ! すぐに勇者を呼び戻せ! 権限でもなんでも使ってだ!」
「それはできません。この作戦は総司令官の認可も下りています。つまり正式な任務となり、私の権限範囲外となります」
「おのれ……! ラルドがどんなに危険な魔族か、お前らは分かってない! 勇者は殺されるぞ!」
「大丈夫ですよ。勇者様はお強いですから」
「だからこそだ! 勇者が強いからこそ、ラルドには敵わぬのだ!」
「……どういうことですか?」
「ラルドの魔術は、相手が強ければ強いほど有利な特性がある! 早く止めさせないと取り返しのつかないことになるぞ!!」
「そんな……!」
To be continued→
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