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勇者は働きたくない!!  作者: そらり@月宮悠人


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ルーシー魔法講座の理念

「今度は勇者が風邪か」

「ルーシーに移されたんだよ」

「勇者は軟弱者だな」

「うっさ……いわくしょん!!」

「新たなギャグか?」

「これがギャグに見えるのか?」

「ははは。相変わらず賑やかですねー」

「出たな」

「人を幽霊みたいに言わないでくださいよ」


 ルーシーが風邪を引いた8日後、すっかり回復したルーシーと引き換えに勇者が風邪を引いた。


「ルーシー様の魔法講座は来週から再開と各所に伝えておきました」

「うむ。ご苦労だったな。受講生にはなにか詫びの品を用意せねばな」

「トルマリンはルーシーの執事みたくなってきたな。ていうか詫びの品なんているか?」

「余の都合で延期になったのだ。当然であろう」

「ゆうて、なんかあるか?」

「国王陛下の褒美でも配るか」

「やめんか! ……そうだな、12人の魔法使いによる特別講義なんてのはどうだ?」

「おお! それは良いな!」

「ちょ、ちょっと待ってください! そんな気軽に動けませんよ我々は!」

「お前は気軽に来てるじゃないか」

「ボクはあくまで仕事で来ているんですよ!」

「ルビーの実績もあるし」

「あれはルーシー様に脅されてでしょう!」

「なら王命で動かしてもらうか」

「やめてください!! 大問題になりますから!!」


 珍しく慌てふためくトルマリンを見て勇者とルーシーは大笑いする。


「いやー、トルマリンでもそんな焦ることあるんだな」

「まったくもう、勘弁してくださいよ……」

「あー、そういや客員教授の件はどうなったんだ?」

「それなら断っておいたぞ」

「え?」

「前も言ったが、今は魔法講座が忙しい。王国立魔法学院は生徒のレベルも異なる。とても対応しきれんからな」

「はい。国王陛下にもそのようにお伝えしました。大変残念なご様子でしたが、魔法講座が人気なのは事実ですし、講座を受講された方が魔法学院に進むことがあれば、それだけで貢献度としては十分ですから」

「そうか。なら受講生への詫びの品はトルマリンに考えてもらうか」

「うむ。そうだな」

「お二方はボクを執事かなにかと勘違いしてませんか?」

「有能だからな」

「頼りにしておる!」


 トルマリンはため息を吐くと、「分かりました。考えておきましょう。ルーシー様はくれぐれもご無理をなさらぬよう」とお辞儀して消えた。


「さて、余は講座の準備でも――」

「手伝うよ」

「ぬ?」

「無理をして倒れられたら困るからな」

「……うむ!」


 どことなく距離が縮まった二人を見て、アシルは「良かったな、ルーシー嬢ちゃん」と呟いた。


 部屋に行くとルーシーは本棚から半分ぐらいをごっそり取り出す。


「それ全部使うのか!?」

「そうだ。といっても要点をまとめるから数十頁になるがな」

「これを毎回? 同じの使い回すんじゃダメなのか?」

「そうだな……。勇者が勇者スキルを10人に継承するとして、まず全員に同じことを教えるだろう?」

「まあ、そうだな」

「では、その中で飲み込みが悪い者が3名いたとする。同じことを何度もやらせるか?」

「いや、さすがにそれは効率悪いだろう」

「そうであろう? 飲み込みが悪い者は理解が遅いだけだったり、角度を変えればあっさり習得したりする。今から作るのは個人に合わせた教科書のようなものだ」

「……そんなことを、全員にしてるのか?」

「当然だ。余の魔法講座は受講者が中級に合格し、全員が魔法使いと認められることを目標としておる。でなければ余が魔法講座をやる意味がないからな」


 魔法講座に関しては極力ノータッチだった勇者は、ルーシーが疲れて倒れたと聞いた時に、なんとなく忙しそうとしかイメージができなかった。

 こうして実際に作業しながらルーシーの魔法講座に対する理念を聞いた勇者は、本当の意味でルーシーの忙しさを理解した。


「……待てよ? ルーシーは文字読めないんじゃなかったか?」

「うむ。だから絵や図などから推察している」

「それであのハイレベルな授業やってたのかよ……。見たいところは? 俺が読もう」

「いいのか……?」

「手伝うって言ったろ」

「うむ! ではここを」

「えーと、属性魔法における関係性と応用技術について。……俺より遥かに進んでるな」

「心配するな、勇者にはまた今度個人レッスンをしてやる」

「そ、そうか」


 自分にだけ個人レッスンをしてくれると聞いてちょっと嬉しくなる勇者であった。


 *   *   *


「すまなかった!」


 魔法講座を再開して開口一番にルーシーは謝った。


「余の自己管理が甘くて迷惑をかけた」


 深々謝るルーシーに、受講者は「そんな!」「気にしないでください!」と声を掛ける。


「私は上級魔法使いの先生から学べるだけでも幸せなんです」

「そうですよ。俺なんて今までは初級魔法ですらまともに扱えなかったのに、ルーシー先生に教わってから属性魔法における関係性と応用技術についての試験で96点取れたんです!」


 そう訴える受講者を見て勇者はハッとする。


「あの時ルーシーが作ってた教科書か」


 初級で躓いていた子が中級レベルの試験で高得点を取ることは容易ではない。普通なら私塾に何カ月か通って覚えるものである。

 それをルーシー魔法講座では週一回、4回の講座で、しかも無料。これは革命と言えるが――


「最近は批判が多いようだ」

「批判?」

「私塾の連中からしたら、上級魔法使いの講座が無料で受けられるなんて面白くないのさ」

「それもそうか……。それで、なんて言われてるんだ?」

「上級には上級の仕事があるはずで、魔法使いになるための勉強は私塾に任せるべきだ。てな」

「そうはいっても、私塾に通えない子だっているんだろ? うちに来てるのは多くがそういう私塾難民だぞ」

「いや、それが流れが変わってきてるんだ」

「流れ?」

「予約の後半は私塾に通える人間も多い。私塾から人が流れてるんだそうだ」

「そうなのか」

 

 勇者は視線をルーシーに移す。トルマリンが用意してくれたお詫びの品を配っていたルーシーは、視線に気づいたのか勇者をチラッと見る。

 ルーシーの豊富な知識と教え上手な才能を活かそうと始めた魔法講座だったが、暗雲が立ち込めていた。


「トルマリンに相談してみるか」

「それがいい。立ち上げの中心だしな」


 しかし、翌日に事件は起きてしまう――。



 To be continued→

最後まで読んで頂いてありがとうございます。

応援よろしくお願いします。



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