国王の策略
「その魔王と一緒に暮らしなさい」
「「……ええええええええ!!?」」
勇者と魔王は見事にハモった。
「うむ。息ぴったりではないか」
「ちょ、お待ちください国王陛下! 私が――勇者が魔王と暮らせと、そう仰るのですか!?」
「いかにも」
「私のスローライフ計画はどうなるのです!?」
「魔王とスローライフすればいいじゃない」
「冗談じゃない! 勇者なんかと一緒に暮らせるか!」
「だがそうなると、魔王は特製の地下牢の中で暮らすことになるぞ?」
「ふん、そんな檻。いつでも逃げ出せるわ」
「その弱体化した体では壊せんよ」
「なら回復するまで待つだけだ」
「いったい何百年掛かるかな?」
「その程度、お前ら人間からしたら永い年月かも知れぬが、余にとっては昼寝のごときもの」
「魔王よ。あまり人間を見くびらないほうがいい。その何百年もの間に魔王を研究し尽くして、その状態のまま殺せる方法を編み出せるだろう。聖属性なだけで魔王は神でも精霊でもないのだから。あるいは秘術とやらも解き明かせば無効化魔法を作ることができる」
「ぐぬっ……」
「逆に、勇者と共に暮らすのであれば、ほぼ無制限な自由を与えよう。ただし勇者同伴の制約は掛けさせてもらうがね」
「……本当か?」
「ワシは嘘を言えない。そういう制約魔法が掛かっておる」
と言って、国王は胸元にある魔法による刻印を見せる。
「これは国家魔法というものでな。国王直属の優れた魔法使い12人が創った魔法だ。現在使えるどんな解除系魔法でも解除できん。外すとしたら創った12人全員の解除キーが必要になる。もし……まあ得はないが、もし魔王が解除系魔法に相当する強力な魔術を持っているのなら、あるいは外せるやも知れんがな」
「なるほど、そういうことか。それが信用の担保というわけだな」
「その通り。理解が早くて助かる」
「ふん。余は魔王だからな。――いいだろう、貴様の策略に乗ってやる」
「策略?」
勇者がなんの事だ? と魔王に問う。
「気づかなかったのか? この国には国家魔法とやらを創れる12人の優れた魔法使いがいる。その力は国王が身を以て示した」
「って、嘘ついてるか分からなくないか?」
「確かに分からない。だが検証する必要もない」
「どうして?」
「ん? ……そうか、勇者には分からぬ領分か。国王自身が強力な力を持っているのだ。魔法使いのそれとは別の性質だがな。なのにその力はやけに弱々しくて初めから妙だなとは思っていた。しかしそれが国家魔法とやらのせいだとすれば得心がいく。実際、あの刻印からは強力な魔力を感じるからな」
魔王の解説に謁見の間は静まり返る。あまりに的確だった事と、最初から国王の力を見抜き違和感を覚えていたという事実に。
「素晴らしい才能だな。正直なところ、先程まで本当に魔王かどうか疑わしかったが……。敵ながら天晴だ。尊敬に値する」
「国王陛下」
「分かっている」
踏み込んだ発言を宰相が諌める。制約魔法があるため本心であることは分かるが、立場上、魔王を尊敬するなど爆弾発言になりかねない。
「ふん。余に平伏し、忠誠を誓うのなら元に戻ったあとも生かしておいてやる」
「それはできない相談だ。ワシは仮にもアリストリア王国を預かる身にあるからな」
「だろうな」
「……ところで、策略ってなんだ?」
「ああ、要は優秀な魔法使いが常に余を狙えるというわけだ」
「しかし聖属性には手出しできないぞ」
「今は、な。ほぼ常に一定の場所にいて、勇者と行動を共にするのだぞ? あらゆる角度、距離から観察できる。これほど研究しやすい環境はないだろう」
「あっ!」
「コスト面でも特製の地下牢を造るには人も金も時間も掛かるだろうが、勇者と暮らすのであれば空き家だけで事足りる。万が一移動が必要になっても地下牢は移動できないが空き家ならいくらでもあるからな。
それに、地下では試せない魔法も使えるから研究の幅も広がる。大したタヌキだよ国王は」
「……」
勇者は言葉が出なかった。魔王に言われてようやく国王の策略を理解した。と同時に、与えられた使命が思ってたよりも重要だという事にも気づいた。
「勇者よ。お主には期待しておる」
「……御意」
国王から与えられた勇者の使命は以下の通りである。
・魔王と行動を共にし、至近距離であらゆる角度から弱点を見つけること。
・魔王の情報は常に12人の魔法使いに共有し、共に魔王を倒す方法を模索すること。
・魔王による人間、及び家畜等への被害が出ないよう監視すること。
・少女が魔王であると悟られぬよう、人間社会の常識を教えること。
なお、魔王の見た目は人間の少女と変わらないため、魔王による被害を受けた孤児を勇者が引き取った。という設定にする。
――こうして、勇者と魔王の同居生活が始まった。
To be continued→
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