魔法講座
「このプリンは絶品だな!!」
「近くの農家からいい卵を貰ったんだ。色々考えたが、ルーシー嬢ちゃんならスイーツがいいかと思ってな」
「アシルは余のことを分かっておるな!」
「勇者は勉強捗ってるか?」
「ああ。ルーシーは教え上手だよ」
「ふーん。なら講師にでもなったらどうだ?」
「講師?」
「アリストリアは世界有数の魔法大国だ。王国立魔法学院に進学するための私塾はいくつもある。魔法使いは子どもの憧れで人気の職業だからな、講師は常に人手不足なんだよ。上級や最高位の魔法使いは仕事が優先だからな」
「12人の魔法使いもここに張り付いてるしな」
勇者は柱に光るルビーのような盗聴器を見る。
「ふむ。べつに教えるのは構わんが、余は勇者と行動を共にする必要がある」
「それなら、勇者も講師をすればいい。魔王と互角にやりあったその実力があれば引く手あまただろう。国王陛下からの信頼も厚いしな」
「いや、俺は働きたくない」
真顔で言う勇者にアシルは呆気に取られるが、「はっはっは!! 勇者が働きたくないか!」と爆笑する。
「本来なら働かざる者食うべからずって言いたいところだが、勇者の貢献度と国王陛下からの褒美を考えたら文句も言えないな」
「ダメ人間まっしぐらだな」
「違いない。はっはっは!」
「ほっとけ……」
「しかし、ルーシー嬢ちゃんの力をここで腐らせておくのはもったいない。どうにか活かせないか?」
「だ、そうだ。アイデア募集」
勇者は盗聴器に向かって少し大きな声で言う。
「12人の魔法使いをそんな雑に使うのも勇者くらいだな」
「いや、トルマリンだからかな? なんか慣れた」
「それは光栄ですね」
「――っ!?」
唐突に現れたトルマリンに驚いて勇者は椅子からひっくり返る。
「大丈夫ですか?」
「いきなり現れるな!」
「慣れたと仰っていたので、大丈夫かと」
「そういう意味じゃねぇ……」
「ところで、ルーシー様についてなにやらアイデアを募集とか」
「あー、ルーシーの魔法に関する豊富な知識を講師として活かせないか? とアシルから提案されてな」
「なるほど。確かにルーシー様の知識はそこらの教授よりもありますからね」
「だけど、ルーシーは勇者と同伴じゃないと出歩けない。それと、俺は働く気はない」
「大丈夫ですよ、勇者様を働かせるようなことはしません」
「12人の魔法使いの一人が勇者を甘やかしてどうする」
「いえいえ、甘やかすなんてとんでもない。勇者様は――」
「トルマリン、余計なこと言うな」
「これは失礼を」
「なんだ?」
「なんでもないよ。俺は国にすごく貢献したからなんて、わざわざ言う必要ない」
「自分で言うておるではないか……。やはり自意識過剰か」
「うっさい!」
ムスッとする勇者を見て、トルマリンはクスッと笑う。
「では、こうしてみてはいかがです?」
* * *
「おおーっ!」
思ったより多くの希望があり、男女合わせて25名が参加した。
「『上級魔法使いによる魔法講座』か。上手いこと考えるもんだな」
「なるほどな、自宅で講師をやれば勇者と同伴かつ勇者がわざわざ一緒に王都へ行く必要もない。しかも国王陛下から頂いた褒美を運営資金にしての無料講座とは、恐れ入ったよ」
それに自宅なら盗聴器もあるから12人の魔法使いも助かる。という裏事情もあったりする。
かくしてルーシーこと魔王による魔法講座が開設されたのである。
「だけど、大丈夫なのか?」
「なにが?」
「上級魔法使いなんて謳っているが、ルーシー嬢ちゃんは上級魔法使いじゃないんだろ?」
「そこはトルマリンが計らってくれたよ。上級魔法使いの試験を特別に受けさせてくれて、満点合格だったそうだ」
「ま、満点!?」
アリストリア王国の人口約5000万人に対して魔法使いは250万人。国民の5%が魔法使いという人気職業である。
魔法使いのヒエラルキーは最高位が0.012%で300人。上級は0.2%で5000人ほど。中級が30%、初級が約70%となっている。常に変動はするが、最高位はほぼ揺るがない。
さらに上級試験には条件があるため、上級昇格は大変狭き門なのである。その上級試験にルーシーは満点で一発合格したというのだから、アシルは腰を抜かす。
「俺もまさか満点合格するとは思わなかったよ」
ルーシーの正体を知る勇者、12人の魔法使い、そして国王と臣下達は、合格できるかは五分五分だと考えていた。確かに知識はあるが試験には実技も含まれていたからだ。
ところがルーシーは実技試験も難なく突破してしまった。勇者は「この世界に慣れるのにあと600年は掛かるんじゃなかったのか!?」と噛みつく勢いで問うと、
「あれは魔族全体の話だ。余が魔法を使えないとは一言も言っておらんぞ? だいたい物質魔法の実演をしたではないか」
あっけらかんと言った。
「まあ、とにかくこれでルーシーの才能が活かせて、アリストリア王国に貢献できるようになったわけだ。ありがとうアシル」
「俺はただもったいないと思っただけだよ。さて、受講生どもに食わせる昼飯の準備でもするか」
この講座では宮廷料理人の昼食付きという贅沢すぎるオマケがあった。なおアシルは一流料理人とだけ紹介されている。
そしてルーシーは教師の格好に着替えてくると教壇に立つ。
「皆の者、準備はよいな?」
「「はーい!」」
「よし! では第一回、魔法講座を開始する!!」
To be continued→
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