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勇者は働きたくない!!  作者: そらり@月宮悠人


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ねこねこ食堂

「すまん!!」

「申し訳ありませんでした」


 勇者とエメラルドから全力で謝られたアシルは「いや、べつに気にしてねえよ」と頭を掻く。


「それにルーシー嬢ちゃんは無事だったんだろ? 良かったじゃねえか」

「エメラルドさんとパールさんのおかげでな」

「いえ、そんな、当然のことをしたまでです」

「アシルは買い物終わったのか?」

「ああ。一通り揃えたぜ」

「腹が減った!」

「そうだな、折角街に来たんだし、なにか食べていくか」

「なら俺がいい店を紹介しよう」

「そうか、アシルは宮廷料理人だもんな。頼むよ」


 アシルに案内された店は、活気ある市場から少し離れた場所にあった。


「ねこねこ食堂……」

「まあ、可愛らしいですね」

「美味そうな匂いはするな」

「騙されたと思って入ってみろよ」


 店に入ると、中は少し狭いが意外と普通の食堂だった。


「お、誰かと思えばアシルじゃねーか」

「よう大将。元気でやってるか?」

「おうよ! そっちの若ぇ連中は?」

「勇者と凄腕魔法使いと、勇者が保護してる孤児だ」

「なんだかすげーパーティだな! ……孤児か、名前は?」

「ルーシーだ!」

「ルーシーちゃんか。いい名前だな!」

「うむ。余も気に入っておる!」


 不意に勇者は目頭が熱くなるが、悟られぬよう堪える。


「よーし! ルーシーちゃんは好きなの食ってくれ!」

「いいのか!?」

「おう! 代わりにこの木偶の坊から巻き上げてやるからよ!」

「そりゃないぜ大将」

「ほら、さっさと席に着いて注文しやがれ!」

「分かったよ」


 近くのテーブル席に着くとメニューを広げる。


「大将、良い人だな」

「だろ? 俺の恩人なんだ」

「恩人?」

「ああ、俺が駆け出しの頃に料理のイロハを叩き込んでくれた人だよ」

「そうなのか」

「余は食べ放題だ!」

「はは。あの人は孤児とか、気に入った子には腹いっぱい食べさせてくれるんだよ」

「アシル、まさかそれで……?」

「いや、そんな打算じゃねえよ。ただまあ……ルーシー嬢ちゃんを見て大将がどう反応するのか、見てみたかったんだ」

「反応を?」

「俺はなにも聞かされちゃいねえし、根掘り葉掘り訊ねるつもりもねぇ。が、嬢ちゃんが只者じゃねえってことは分かる」

「まあ、な」

「いいんだよ、言いたくないことは言わないで。だが俺はよく分からねえままに、モヤモヤしながら仕事したくはねぇ。大将は人の本質を見抜くからな、機会があれば会わせたいと思っていた。その大将が認めたんだ。改めて俺はルーシー嬢ちゃんに全力で尽くすぜ」

「うむ。余もアシルは気に入っておる。よろしく頼むぞ!」

「ああ」


 アシルの本心を知れたところで勇者はカツ丼、エメラルドはカレー、ルーシーは醤油ラーメン、アシルは牛丼をそれぞれ注文した。


「美味い!!」


 ルーシーは醤油ラーメンをあっという間に食べきると替え玉を注文する。


「あまり食い過ぎるなよ?」

「こんな美味いものを食い過ぎるなというのは無理だ!」

「はは、大将の腕はすごいだろ?」

「ええ。とても美味しいです。こんなに美味しいカレーは初めて食べました」

「アシルの料理が美味い理由、少し分かった気がするよ」

「いやあ、俺なんてまだまだだよ」


 謙遜するアシルだが、宮廷料理人はアリストリア王国の中でも選ばれた料理人しかなれない超倍率の難関である。それだけでもアシルの実力は伺い知れる。


「大将! ラーメン美味かったぞ!」

「そうかい! またいつでも食いに来な!」

「うむ!」


 満足した4人はそれぞれ礼を言って店を出る。


「それじゃあ帰るか」


 帰りは景色を見ながら。という要望をどう叶えるのだろうかと勇者は気になって仕方なかった。

 それがまさか空を飛ぶとは、三人も予想外だった。


「すげーなおい! 魔法の絨毯かよ!」

「魔法って、本当にすごいんだな」


 魔法の絨毯。物質魔法に長けた職人が手作りする高級品である。とても市民が購入できる代物ではない。


「フフハハハハ、勇者が希望するならまた教示してやっても良いぞ」

「エメラルドさん、これって操作も物質魔法なんですか?」

「おい聞けよ勇者」

「はい。魔法の絨毯そのものにも物質魔法は掛けられていますが、高度、速度、方向は全て操縦者が行います」

「え? じゃあ絨毯の物質魔法はなんのために?」

「それはな、飛ぶための魔法だ」

「なんだ? 飛ぶためのって」

「物質魔法は物体を動かすことができるとは覚えておるな?」

「ああ」

「以前、余がやったように一方向へ動かす単純なものでは絨毯を浮かすことはできぬ。が、逆方向へ動かす魔法も織り交ぜたとしたら?」

「……そうか! 上下に上手く調節すれば浮かせることができるのか!」

「うむ。さらに前後左右、4方向へ動かす魔法も織り交ぜることで自由自在に空を飛べるという仕組みだ」

「なるほどなー。……って、それ全部考えながら動かすのか!?」

「ふふ、その心配はありません。『飛べ』、『進め』、『止まれ』などの命令をするだけで操れます。少しコツは要りますが、中級レベルの魔法使いであれば難しくはありません」

「そうなんですか。……あれ? もしかして魔法の絨毯って魔導具なんですか!?」

「はい。魔導具の一種と思ってもらって差し支えありません。魔法の絨毯は現代魔法の結晶と言えます。魔法の基本から高度な技術まで、全てが詰まっています」

「はは……そりゃあ高価なわけだ」

「ちなみに魔法の絨毯には速度制限がない」

「え? じゃあ最高速度とかはないのか?」

「うむ。ただし物理的限界はあるがな」

「それと、アリストリア王国も加盟する世界的条約による速度制限はありますので、運転には注意が必要なんです」

「ですね、みんながみんな高速で飛び回ってたら危ない」


 空中ドライブを楽しんでいると、あっという間に辺境の自宅へと着く。


「こんなに楽しいなら行きもこれで良かったな」


 そう言う勇者の耳元で「次はぜひ二人だけで」とエメラルドは囁いた。


「っ!?」

「ふふ。それではまたお会いしましょう」


 魔法の絨毯で去ってゆくエメラルドを、勇者はなんとも言えない気持ちで見送った。


「おい勇者、早く入れ」

「……ああ」

「アシルがおやつを作ってくれたぞ!」

「お前まだ食うのかよ!?」



 To be continued→

最後まで読んで頂いてありがとうございます。

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