魔王、光落ちする
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稲妻が走り荒れた部屋を照らす。激しい戦闘により空いた天井の穴から重く暗い雲が見える。
ここは魔王城。世界中の人間を震撼させた魔王の居城である。
「はぁ、はぁ……」
満身創痍の勇者一行は、戦えるのは勇者だけになっていた。が、残すは魔王だけと逆王手を掛けていた。
「フフハハハハ!! まさかここまで苦戦するとは思わなかったぞ。褒めてやろう。だが、これまでだな」
「くっ……! まだだ、まだ終わりじゃない!」
勇者は剣を構えて立ち上がる。
「ほう、まだ足掻くか。では絶望を与えてやろう」
「そうはいくか! 最後の技を受けてみろ!」
「ほう? 余に挑発とは小賢しい。いいだろう、最後に良いものを見せてやる。来い」
「いくぞ!!」
勇者の体が光り輝き、オーラが剣に集まる。
「セイントオーラ・ブレイクッッ!!!」
勇者の必殺技が魔王に迫る。と、魔王は不敵な笑みを浮かべた。
「掛かったな!」
「なに!?」
「秘術・属性相転移!!」
魔王が秘術を発動させると、ピカッと眩い光を放つ。
「な、なんだ?」
「フフハハハハ!! 勇者よ、貴様の技は全て無効化された!」
「なっ!?」
魔王が宣言する通り、先程勇者が放った必殺技。セイントオーラ・ブレイクは消滅していた。
「そんな……バカな! い、一体なにがどうなって……」
「冥土の土産に教えてやろう。余の編み出した秘術は属性を対極のものへと変換するものだ」
「属性の変換だと?」
「そう。つまり、今の余は光属性というわけだ」
「そんなことが!?」
「よって、貴様の攻撃はノーダメージになる。そして! 再びの秘術によって本来の闇属性に戻るのだ!」
魔王は再び「秘術・属性相転移!!」と発動させる。……が、
「……なんだ? 属性相転移!! ……どうしたというんだ!?」
「……魔王、お前その姿は」
「なに?」
魔王は自分の身体を見て「なんじゃこりゃあ〜!!」と叫ぶ。
「よ、よ、余の身体が……縮んでいるではないか!!」
「ていうか、お前……女だったのか?」
「はぇ?」
魔王の外套も仮面も体のサイズに合わず落ちてしまい、そのご尊顔が露わになっていた。
煌めく美しい金髪に、息を呑むターコイズブルーの瞳。その愛らしい顔は見るもの全てを虜にするであろう。
「〜っ!!」
あまりの恥ずかしさに有り余った服に顔を埋める。
「……あー、そんじゃ俺らは帰るんで」
「なっ!? け、決着はつけないのか!?」
「いや、今のお前は魔王じゃないし、魔力なんてそこらの雑魚レベルだし、全然脅威じゃないんで。ていうかテンションとモチベが急降下したんで」
「ぶ、無礼者ぉ〜! 余は魔王であるぞー!」
「ふむ。しかし勇者殿、放置するのは危険ではありませんか?」
残ったメンバーで唯一動けた僧侶が提案する。
「どうして?」
「このまま放置しておけば、また力を蓄えるだけです。今のうちに倒すのが最良と思われますが」
「確かに……。それに手ぶらで帰ったら報奨金も貰えないしな」
向き直る勇者は魔王を見て、やはり剣は抜かなかった。
「止めた。こんな幼女倒したら寝覚めが悪くなりそうだ」
「ですが、放置は危険です。報奨金も貰えませんよ」
「んー、あー……そうだな。ならこうしよう――」
* * *
「――と、いう訳で捕らえて参りました。報奨金ください」
「いや、なんで?」
アリストリア王国に帰還してすぐ、謁見の間に魔王を連れて来た勇者に国王は思わずツッコミ、周りはどよめく。
「あとの処分は国王陛下にお任せ致します」
「いや丸投げか。そのまま倒しまえばいいだろう。今の魔王は非力なのだろう?」
黒いフードとマスクで顔を隠した怪しい見た目の少女を見て、国王は言う。
魔王はすっかり愛らしくなってしまった顔やキラキラの金髪を見られるのが嫌で、いかにも不審者な格好をしていた。
「では陛下自ら成敗されては?」
「なに言ってるの君は? しょうがない。総司令官、やってくれ」
「は。……」
総司令官、ヒラーク・デュヒラムは瞬時に戦闘態勢に入ると剣を抜き、小さい魔王に向ける。
「ほう、余に歯向かうというのか? 面白い」
「お前まだ魔王やってんのか。魔力ないくせに」
「うるさいっ! 余は魔王だ!」
「……」
ヒラークはしばし魔王と対峙すると、おもむろに剣を収める。
「む? どうした総司令官」
「申し訳ありませんが、私には斬れそうにありません」
「なんだと!?」
「ふふん。恐れ入ったか」
「いや、お前なにもしてないだろ」
「ふーむ。では衛兵よ、魔王を倒せ」
いきなりの無茶振りに衛兵数名は動揺する。
「わ、我らがですか?」
「そうだ。誰でもよいぞ。見事討ち取った者には生涯遊んで暮らせる褒美を与えよう」
あまりのビッグチャンス到来に衛兵はどよめく。そんな中、「で、では私めが」と一人が名乗り出る。
槍を構えて魔王と対峙する。ニヤニヤと不敵に笑う魔王を相手にしばし膠着すると、「……申し訳ありません」と、やはり矛を収める。
「ど、どうしたと言うのだ!?」
「国王陛下、これが魔王を連れ帰らざるを得なかった理由です」
「どういうことだ、説明せよ」
「は。魔王は秘術によって自らの属性を闇から光とすることで、私の技を無効化しようと試みました。結果的に無効化には成功したのですが、属性は光ではなく聖属性へと変わっていたのです」
「せ、聖属性だと!?」
国王が驚くのも無理はなかった。聖属性とは本来なら神や精霊といった神聖な存在のみが持つ属性だからだ。その特別な属性を、よりにもよってまさか魔王が持つなど、少し前ならば天地がひっくり返ってもあり得ないと言われただろう。
「……なるほど。先程私が攻撃できなかった時の違和感は、畏れを抱いたからなのでしょう」
「そう。衛兵にしてもそうです。生涯遊んで暮らせる報奨が目の前にあって、こんな小娘当然の小物を倒せないはずないでしょう」
「た、確かに……」
「かくいう私もそうです。現地でこの姿になった魔王を倒そうとしたところ、寝覚めが悪くなると感じました。最初は幼い少女だからだと思いましたが、よくよく調べてみたところ、聖属性だと判明したのです」
「な、なんということだ……」
つまり、魔王は誰にも倒せない存在になってしまったということである。
「フフハハハハ、余は秘術の反動で魔力の大半を失ったが、回復次第再び属性相転移によって闇属性へと戻り、貴様らを皆殺しにしてやるからな。今のうちに余生を楽しんでおけ」
「陛下に対して無礼だろう」
脳天にチョップを受けた魔王は「な、なにをする無礼者〜!」と勇者をポコポコ叩く。
その様子を見ていた国王は一計を案じる。
「ふむ。では勇者よ、お主に今一度使命を与えよう」
「は? 私にですか?」
「そうだ。その魔王と一緒に暮らしなさい」
「「……ええええええええ!!?」」
To be continued→
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