第6話:影の策略、光の忠義
藤吉郎の名は小さな部隊の中で急速に広まっていた。
「戦術が冴えてるんだとよ」
「あの草履取り、信長様に気に入られてるらしい」
それは喜びと同時に、別の感情も呼び起こしていた
──嫉妬、警戒、敵意。
「おい、木下。ちと耳寄りな話がある」
ある夜、城内の納屋で藤吉郎は一人の若侍に声をかけられた。
「清洲の村人が、信友の残党と通じているらしい。だが、殿には話がいっていない」
「……で?」
「おぬしが直接、殿に密告したらどうだ? また“お手柄”が増えるぞ」
その言葉の裏にあるもの──藤吉郎は即座に読み取った。
「わしに泥を被らせて、自分らは知らん顔するつもりか……」
『敵意分析:この人物は上位家臣からの命を受けて動いています。
藤吉郎様を排除したい意図が高確率で存在します』
「……ナニワ、逆手に取ったろまい」
『戦術提案:密告の内容を改変し、殿に“村人ではなく内部の裏切り”を示唆。
裏工作の証拠を得てから進言すれば信頼度が上昇します』
「よっしゃ、祭りの準備だわ」
翌日、藤吉郎は清洲の村に出向き、わざと敵残党と接触しようとするふりをした。 背後では、例の若侍が尾行しているのも知っていた。
『記録中:尾行者は伊勢守家の郎党。会話録音モード起動、証拠取得中』
そして、罠にかかったのは若侍の方だった。
藤吉郎は信長の前で静かに証拠を提出した。
「殿、内通の動きは村人ではなく、家中にございました。すでに証拠も──」
「……ほう」
信長はしばし沈黙し、やがてうなずいた。
「よくやった、猿。……いや、木下藤吉郎。おぬし、光のように誠を通す奴じゃ」
『称賛パラメータ上昇。信長の“直臣”に昇格する可能性:高』
「猿でええよ。光でも影でも、信長様のためなら、わしはどっちでもなる」
こうして藤吉郎は、“策謀”の世界にも一歩足を踏み入れた。
それは、未来の天下人に求められる資質
──“忠義と冷徹”の両立という名の、危うくも必要な道だった。




