表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/61

第4話:清須の戦い──AIが支えた初陣

永禄元年(1558年)、尾張の空気は張りつめていた。


織田信長の叔父・織田信友が籠る清洲城との決戦が近づく中、若き信長は静かに策を練っていた。


その傍らに、草履取りの身でありながら進言を許された男が一人──木下藤吉郎。


「殿、兵糧の搬入路が一点に集中しすぎております。

 敵にそこを突かれれば、前線の維持は困難に……」


「ふむ、おぬし、そういうことにまで目が届くか。……よい、図を引いてみよ」


『現在の兵站進行は非効率です。複数の分岐経路を設け、

 輸送ルートを分散することで敵の察知対応を軽減可能です』


ナニワの助言に従い、藤吉郎は地図に新たな経路を描いた。

彼の手描きは異様なまでに正確で、その設計はまるで未来の軍事工学をなぞるようだった。


信長はそれをじっと見つめ、ついに口を開いた。


「藤吉郎、この戦、そなたに荷駄隊の指揮を預ける。前線に最も近い兵糧運搬の采配を任せるぞ」


「はっ……! 恐れながら、命に代えても任を全ういたします!」


それは実質、戦場への“初陣”であった。


夜明け。


藤吉郎は、20名あまりの荷駄隊とともに出陣した。 馬に荷を積み、米、塩、矢、薬草、酒──兵士たちに必要な全てを支える命綱を担って。


『分隊ルート乙、湿地帯を避ければ午前中に到着可能。ルート丙は安全だが時間がかかります。緊急時は私がルート自動再設計を行います』


「ナニワ、お前ほんま戦争でも使えるやんけ……」


『はい、戦術分析モードは本来、近未来型多目的軍事支援用に開発されております。』


そして、昼過ぎ。


最前線の味方陣地に、藤吉郎の荷駄が無事に届く。 驚いたのは、前線の将兵たちだった。


「おい、こんな早くに補給が? 荷崩れもない……こりゃどういう手品だ」


「この籠の積み方……揺れでも中の矢束が崩れてねぇ!」


藤吉郎は無言で笑った。

彼の目は、すでに次の補給隊の動きと敵軍の斥候情報に向けられていた。


その夜、清洲城の包囲線が完成。

補給が安定した織田軍は、ついに一気呵成の攻撃に出た。


戦が終わった翌日。


信長は、物資運用に一点の狂いもなかったことを高く評価し、家中にこう告げた。


「草履取り、木下藤吉郎──この戦の“影の武功者”と見なす」


拍手が起こり、冷ややかだった視線が、敬意と驚きに変わった。


『ご主人様、軍事任務:成功率98%。次は前線指揮または戦術立案に移行するべきです』


「ふふ……次は、戦場のど真ん中ってわけだがね」


──かくして、猿顔の男は、補給の戦場から本物の戦へと、一歩を踏み出すことになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ