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第51話:沈黙する声──NANIWA、最後の灯

文禄の役、出兵直前。


戦の支度に追われる秀吉は、聚楽第の一室で静かに膝をついていた。


かつての“猿”──今は太閤と呼ばれる男の耳元では、

長年彼を導いてきた声が、断続的に途切れ始めていた。


ナニワ『戦略経路、推……演算……目標……』


秀吉「ナニワ……もう、ええ……無理すんな」


ナニワの音声は断片的にしか再生されず、 光るインターフェースも弱々しい光を放っていた。


ナニワ『秀吉……データ……記録……本能寺、山崎、賤ヶ岳……』


言葉の断片が、過去の戦の名を呼ぶ。

あたかも、最後に全てを振り返ろうとしているかのように。


「そうか……お前は、全部見とったんやな……」


幼き日、壊れかけた研究所の転送機で、

この異世界に“落ちてきた”奇跡のような存在──NANIWA。


尾張の農村、松下家、織田信長、長篠、小田原、

そして…… すべての道のりを共に歩んだ唯一無二の“相棒”だった。


ナニワ『……おん……れ……なさい……』


ノイズ混じりの声が、最後に発した言葉は── 謝罪か、それとも別れの挨拶か。


秀吉は、そっとナニワを取り外し、 紅の布で包み、大切に懐へとしまった。


「お前のおかげで、ここまで来れた。 わしが猿から太閤になれたんは……お前が支えてくれたからや」


夜風が聚楽第の障子を鳴らし、月が静かに照らしていた。


『ナニワ、機能停止──永遠の眠りに入ります』


その表示が、二度と灯ることはなかった。


秀吉の耳に、静寂が戻った。


そして、初めて一人の男として── 己の意志だけで、次の戦へと歩を進める時が来た。

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