52/61
第50話:太閤、誕生──秀次へ継ぐ座、夢のかたち
文禄元年(1592年)。
天下統一を果たした豊臣秀吉は、政権の安定を期し、
甥である秀次に関白の座を譲り、自身は「太閤」となった。
かつて日吉丸と呼ばれた農民の少年が、 今や帝に最も近い男となり、
次世代に“天下”を託そうとしていた。
ナニワ『権力移譲処理、完了。 豊臣家継続性:計画通り推移。側近評価:高。』
秀吉は、秀次に政務を任せつつも、なお実権を握っていた。
信頼する家臣団の間でも、まだ“実際の天下人は秀吉”という空気が濃く、
彼の存在感は失われることはなかった。
ナニワ『後継者問題:暫定的処理。秀次殿に権限集中、継続観察を推奨。』
「……あいつにはまだ荷が重いかもしれんのぅ」
秀吉は、繊細な表情で呟いた。 かつての藤吉郎のような勢いを、秀次から感じ取れなかったのだ。
また、ナニワもすでに明らかな劣化を示していた。
ナニワ『メモリ断片化進行……情報処理精度:低下中。』
会議中に突如沈黙したり、 異なる助言を繰り返したり──
その様子は、側近たちにはただの“秀吉の気まぐれ”と映っていたが、
本人にとっては、かつての片腕が徐々に壊れていく焦りそのものだった。
太閤となった秀吉は、なおも政を握り、 次世代の政権移行を支える一方で、
「海外への夢」をついに現実へと動かし始める。




