50/61
第48話:茶々、月影に咲く──血統と未来への決断
天正十六年──
聚楽第にて、ある夜。 秀吉はひとり、月を眺めていた。
その耳元で、ナニワが静かに告げる。
ナニワ『豊臣政権の未来安定化のため、御子誕生が望ましい。
遺伝的・政治的観点より、織田家との血統融合を推奨。』
「……織田の血、か」
信長の姪にあたる、茶々── かつて小谷城で母・お市と共に救われ、今は秀吉の保護下にある女。
ナニワ『茶々殿、民心・武家評共に良好。 側室迎入による内部支持率向上見込:高。』
「ナニワ、そんな計算することか……」
それでも、天下の道を固めるため。 秀吉は、茶々を静かに呼び寄せた。
「ワシには……まだ夢があるんだわ。そんだで、一緒に歩んでくれんか?」
茶々はしばらく無言のまま月を見上げ、そして静かに頷いた。
数年後──
聚楽第の庭に、新たな命が芽吹く気配。
茶々は懐妊し、秀吉の顔にも柔らかな笑みが戻った。
だがその裏で──
ナニワ『演算ユニット温度上昇。 記憶保存帯域:劣化進行中。』
栄華の陰に、 ナニワの終焉が、確実に近づいていた。




