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第33話:炎と反逆──松永久秀、散る

天正五年(1577年)、秋──


織田信長が畿内統一へ向けてその勢いを強める中、 大和国の山上に聳える信貴山城に、

ただ一人、逆らい続ける男がいた。


松永久秀。 戦国の梟雄と呼ばれ、権謀術数に長けたその智将は、

信長に三度までも背いた末に、ついに包囲される身となっていた。


だが、松永には他の武将とは異なる、奇妙な一面があった。

彼の右耳に常に収まっていた漆黒の小型装置。

それは──未来より誤って転送されてきた、初期型のAI内蔵イヤホン、

コードネーム「NAN-IWA α」であった。


彼は、藤宮研究所の助手が誤操作したタイムリーク装置によって

偶然にもこの時代に辿り着いた未来のテクノロジーを、 己の知略に取り入れてきたのだった。


NAN-IWA α『警告:未来改変度、極限に達しています。抑制策が必要です。』


「未来の人間が干渉しすぎた結果、歴史がねじれ始めておる……」


松永は、未来の知識を吸収するごとに、 現実との乖離に苦しんでいた。

彼の行動は時に狂気とも思われたが、 それはすべて、“未来に対する恐れ”からだった。


織田信長を止めねば、未来が崩れる── そのNAN-IWA αの警告に従い、

松永は信長包囲網を画策し、 織田に反旗を翻した。


だが、その代償はあまりにも大きかった。


信貴山城を包囲する織田の大軍。


城内にて松永は静かに装置を外し、 それを掌に載せて見つめた。


「お前の声を信じた結果がこれか……」


NAN-IWA α『私の存在は、時空的矛盾を生むため、この地点での消去が最適です。』


「……そうか。 未来の叡智も、結局は運命の業火から逃れられぬということか」


彼は城に火薬を仕込み、自らもろとも爆薬に点火。


「我が炎、未来を浄化せんことを──」


轟音と共に、信貴山城は炎上。


梟雄・松永久秀、その生涯に終止符が打たれた。


ナニワ『接続端末:NAN-IWA α──ロスト確認。 記録残留なし。

    最終通信、未来改変抑止の選択を確認。』


その報せが届いたとき、秀吉は静かに目を閉じた。


「ナニワ……わしの選んだ道も、やがて試されるんやろな」


ナニワ『Yes, 藤吉郎。だが、わたしは“共に未来を創る”側です』


この言葉が、秀吉にとって慰めか警告か── その意味を、彼はまだ知る由もなかった。

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