第27話:羽柴秀吉、誕生──信長より名を賜る
天正元年(1573年)初夏──
室町幕府が滅び、信長が実質的な天下の覇者としてその名を轟かせ始めた頃。
戦国の風は、新たな名前を必要としていた。
「藤吉郎……いや、お前には、そろそろ“武家の名”が要る」
信長の言葉に、藤吉郎──木下藤吉郎は驚きを隠せなかった。
「名を……わ、ワシに?」
信長は頷き、広間の重臣たちに静かに告げる。
「この男、これより“羽柴秀吉”と名乗らせる」
【羽柴──その由来】
「“羽”は、羽州の地を押さえる柴田勝家に連なるもの。
“柴”は、我が家中の信義を象徴する一字じゃ」
名を与えられたその場で、藤吉郎は膝をつき、深く頭を下げた。
「羽柴秀吉……もったいない御名、ありがたき幸せにございます……!」
ナニワ『新称号:羽柴秀吉。武家としての公的承認取得。
以後、武将格に格上げ。幕府崩壊後の新政体人材候補に登録』
「これで……ワシも、名実ともに天下を目指せる側の人間や……」
秀吉の瞳に、涙が光った。
【諸将の視線】
柴田勝家はその名に含まれた“柴”の一字に静かに頷き、
明智光秀は目を伏せたまま表情を変えず。
信長の家臣団の中でも、羽柴秀吉という名の登場は、
一つの秩序の再編を意味するものであった。
「これからは……この名で、生き抜いてみせる」
羽柴秀吉、誕生。
一介の農民から、今や名を賜る武将へ。
だが、この名がやがて天下を動かす名になるとは、
まだ誰も知らなかった。




