第22話:石山合戦・前夜──信仰の牙、動き出す
元亀元年(1570年)。
信長が浅井・朝倉連合との戦に備えて動き出したその背後で、
もう一つの重大な火種が静かに燻っていた。
──石山本願寺。
「顕如様、やるおつもりか」
南都より届いた密書に目を通した藤吉郎は、 畏れと予感を同時に呑み込み、信長の元へ急いだ。
【顕如、挙兵】
石山本願寺の法主・顕如は、 度重なる織田家の宗教政策と、門徒弾圧の動きを受けて、
ついに「信長討つべし」との檄を放つ。
「信仰の道は、武に屈せぬ」
信仰を支えに結集する一向門徒。 その数、数万とも。
紀伊の雑賀衆、越前の門徒兵、摂津・播磨・伊勢……
各地の一向一揆が一斉に蜂起し、戦国の火薬庫が爆ぜる音が響く。
【藤吉郎の憂い】
「宗教の力……これはただの戦ではないわ」
藤吉郎は、ナニワと共に石山の地形と物資流通を再調査。
ナニワ『石山本願寺:周囲を堀と河川で囲まれた天然要害。
堺との交易密接。籠城能力、極めて高し』
「ほんと、ここを攻めるのは……胃が痛くなるわ」
この時点ではまだ包囲戦は始まっておらず、 藤吉郎は堺商人との調整や、
宗教勢力の政治的な動きに情報網を張り巡らせていた。
【信長、動く】
「宗とて、我が国に弓引くならば、敵なり!」
信長は諸将を集め、石山包囲の予備計画を開始。
浅井・朝倉、そして延暦寺との戦が控える中、 石山本願寺は“後回し”にされるものの、
いずれ確実に討たねばならぬ存在として 藤吉郎に対策を一任する。
「猿。宗とて油断するな。火は、見えぬほどに燃えておる」
石山合戦の幕は、 この年、確かに上がった。
だが本格的な火蓋が落とされるのは──もう少し先の話。
信長と顕如、武と信仰。
戦国の混沌に、新たな火種がくべられた瞬間だった。




