第19話:金ヶ崎の決断──命を賭して殿を務む
【戦の経緯:金ヶ崎の戦いとは】
永禄十一年(1568年)、織田信長は室町幕府の再興を掲げ、将軍・足利義昭を奉じて京を制圧。
その後、幕府に従わぬ越前の大名・朝倉義景を討つべく、信長は進軍を開始する。
信長の妹・お市の方を正室に迎えた浅井長政とは同盟関係にあり、信長は背後の安全を信じていた。
だが──戦の最中、浅井長政は突如として裏切り、信長の退路である北近江から軍を進める。
織田軍は越前・金ヶ崎で、前方の朝倉軍と後方の浅井軍に挟まれる絶体絶命の状況となった。
この局面で、信長は“撤退”を選択。
そして、誰かが命を懸けて“殿”を務めねばならなかった──
永禄十一年、越前国・金ヶ崎。
「殿を……誰が務める」
沈黙の中、木下藤吉郎が進み出る。
「わしにやらせてくだされ」
「むちゃを言うな! 殿とは、命を捨てる覚悟の任ぞ!」
柴田勝家の声にかぶせて、藤吉郎は語気を強める。
「信長様を逃がすには、わししかおらん! ナニワもおるでな!」
ナニワ『殿モード起動。追撃ルート予測、伏兵展開、火計支援プランを提示』
「ようし、ええか兵たち! ここで死ぬな! 残るは勇気と、ちぃっとの知恵や!」
戦場にて、藤吉郎は最も危険な任に就く。
退却ルートを守り抜きながら、浅井・朝倉連合の追撃を翻弄。
要所に仕掛けた伏兵、急ごしらえの火計、弓隊の陽動。
「全軍、交互に退け! 繋げ! 絶やすなッ!!」
日が暮れる頃──織田信長、本隊を無事に退却させる。
殿軍の藤吉郎、深手を負いながらも生還。
「……生きた……信長様、生きとるか……?」
ナニワ『確認:織田信長、安全に撤退完了』
「──ほれ見い、やれる言うたがや」
藤吉郎は笑みを浮かべ、意識を手放す。
この働きにより、木下藤吉郎の名は戦場を駆け、 信長軍中にその忠義と勇猛が広く知られるようになる。
彼が未来を切り拓く“天下人”として認められ始めたのは、 まさにこの金ヶ崎の戦いからであった──




