第18話:破滅と未来──松永久秀、現る
天正元年、京の政局が動き始めたその裏で、
もうひとつの“未来”が動いていた。
ある日、信長の前に奇妙な男が現れる。
「このたびは、我が大和の国よりご挨拶に参りました」
男の名は──松永久秀。
一見すると風雅を好む老将だが、 その目の奥にはどこか異様な光が宿っていた。
「……どうも、あんた、どっかおかしいわ」
木下藤吉郎は、初対面からどこか違和感を覚える。
その理由はすぐに明らかとなる。
ナニワ『干渉波確認。類似波長信号検出──コード:NAN-IWA…?』
(なに!? ナニワと似た信号やと……?)
時は現代──藤宮研究所。
研究者・藤宮頼道が不在のある日、 助手のひとりが好奇心から、未調整の時空装置に手を触れた。
「この転送座標、戦国時代に設定されてる……テストしてみよか……」
思いつきで起動された転送。
その時、近くにあった試作品のAIイヤホン──
型番「NAN-IWA_α(コードネーム:NANIWA)」が巻き込まれ、
テスト用に収納されていた記録装置と共に、空間の裂け目へと飲み込まれた。
だが誤作動の影響で、イヤホン型NANIWAは予定とは異なる場所へ
── すなわち、戦国時代・大和の国に辿り着いた。
そしてそれを拾ったのが、松永久秀その人だった。
松永は、AIナニワ初期型の機能を理解することはなかったが、
断片的に得られる知識や、戦略支援の囁きにより、
“異様なまでの先読み力”を発揮し始める。
初期ナニワ『防衛率:城西側の火薬庫に集中配置。敵来襲予測:明朝五つ時』
(ふむ……火薬にて吹き飛ばしてやろう)
その行動は、信長からも一目置かれるものとなる。
「……あの爺、なんか変だわ。どうも、ワシらと同じ匂いがするわ」
藤吉郎は、ナニワとの通信履歴から確信する。
「ナニワ、この松永っておっさん、なんか知っとりゃすか?」
ナニワ『一致:タイムリーク事故記録あり。転送日時:テストフェーズ初期──001型漏洩個体』
こうして、 藤吉郎と松永久秀、未来を背負う二人が初めて接触した。
だが、その力が交錯する時、 歴史の流れはまた、ひとつ大きく歪むこととなる──




