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第9話:野盗と築城、墨俣の盟

夏の盛り。


木曽川の流れは深く速く、蒸し暑い空気が肌にまとわりつく。

その中で、藤吉郎は額に汗を浮かべながら地図を見つめていた。


「ナニワ、こっから材木を夜に運ぶ……ほんとにいけるんか?」


『渡河ルート確保不十分。現地勢力との接触を提案。

 信頼獲得または同盟により最短6日で築城開始可能』


「信頼っちゅうてもなあ……こっちは、ほとんど“侵略者”扱いやがね」


その夜。 木曽川沿いで見回りをしていた藤吉郎一行は、何者かの襲撃を受ける。  

鋭い刃が闇の中から飛び、護衛の一人が倒れた。


「伏せろッ!! 敵襲や!」


『敵兵力、推定15。動きに統制なし。野盗と判断』


藤吉郎は太刀を構え、木の陰へ身を滑り込ませる。

だが──その中に、妙に貫禄ある男の姿があった。


「へぇ……こりゃ名のある連中の様子だな。夜の川でなにをコソコソしてやがる」


「おぬし、頭か? 名を聞いてもええか」


「蜂須賀小六。ここらじゃ、俺の知らねえ物資は川も流れねえって評判よ」


「藤吉郎や。木下藤吉郎──織田信長様のもんや」


「信長? あの“うつけ”の奴らがここまできとるとはな……」


『交渉開始。彼の影響力を利用すれば、木曽川周辺での物資運搬成功率72%上昇』


「小六。あんたと話がしたい。わしら、敵やない」


その晩、河原の焚き火を囲んで、二人は酒を酌み交わした。


「墨俣に、砦を作るつもりや」


「無茶やな……だが、その無茶に惚れる奴もおる」


「わしはな、戦がしたいんやない。信長様の“次の国”を作りたいんや」


「……なるほど、いい目ェしとる。いいぜ、協力してやらァ。だが一つだけ条件がある」


「なんや?」


「わしらも“未来”を見てみたい。お前の“目”でな」


藤吉郎は笑みを浮かべ、ナニワのレンズをそっと指で弾いた。


「見せたるがね──あんたにも、天下がどう映るか」


こうして、野盗の頭・蜂須賀小六と藤吉郎の“墨俣の盟”が結ばれた。




夜ごと材木が川を流れ、職人が草むらから現れ、兵が静かに陣を張る。


その動きはすべて、藤吉郎とナニワの指示に基づいて、計算され尽くされていた。


『築城進捗率:初日40%、三日目80%。敵偵察の気配なし。夜間作業続行可能』


「さすがやナニワ。……それにしても、小六の奴、よう働くがね」


「おう、まだこっちは梁が足りねぇぞ!」


「職人衆! かかれ! 今夜が峠や!」


そして六日目の夜。


夜が明けると同時に、墨俣に忽然と砦が姿を現した。


まるで、一夜にして築かれたように


──“幻の一夜城”の完成である。


その礎には、猿と盗賊が交わした、火と鉄の誓いが刻まれていた。


翌朝、視察に訪れた信長は、完成した砦を見上げ、唇を噛みしめた。


「……やりおったか、猿。おぬしは、ただの知恵者ではない」


『信頼度上昇。家中での藤吉郎の地位:戦略補佐官へ昇格可能性・高』


「ほら見てみ、ナニワ。これが、わしらの“はじめての城”やがね」



だが、


その夜。


斎藤軍の偵察兵が砦の存在を察知し、急報が走る。



「敵襲ッ! 北東の林より、武装集団が接近!」


『兵力推定80名。装備標準。急襲の意図濃厚』


「小六! いよいよ出番や! わしらの砦、守り抜くで!」


「へっ、やっとこさ暴れられるってわけかい!」


夜闇の中、墨俣砦の周囲に松明が灯る。


『地形誘導戦を提案。堀と柵の導線に敵を誘い込み、集中砲火で分断可能』


藤吉郎は即座に命じた。


「狭間の弓隊、準備ッ! 敵が柵を越えたところで撃て!」


小六と野盗衆は裏手の林を周り、敵の背後に回る。


「いまだ! 挟み撃ちやぁあああっ!!」


火花が飛び、矢が唸り、砦はまさに命の砦と化した。


やがて敵軍は混乱に陥り、撤退を開始。


『敵軍撤退確認。戦闘終了。被害最小』


藤吉郎は砦の上から夜空を見上げ、深く息を吐いた。


「ナニワ……これは、はじまりやな。戦で勝つだけやない、“国を作る”道の」

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