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怪異撃滅クラブ  作者: 秋野てくと
第四章「現実には存在しない場所『さぎり駅』」
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一番列車「異界駅」

「立川~立川~。

 青梅線・南武線はお乗り換えです」


JR中央線の下り快速は、

終点となる立川駅に到着した。


東京都西部・最大の繁華街、立川。

休日の昼間ということもあって、人であふれている。


リュックサックを背負った家族連れや、老夫婦も多い。

おそらくは、近郊の高尾山や御嶽みたけ山への観光客だろう。


車内アナウンスの軽い声に合わせて、

無明むみょうマツリは網棚からリュックを下ろす。


「ミコネ殿、乗り換えでゴザル!」


「はーいッ!

 マツリちゃん、すごい荷物だねッ!」


ミコネが手にしたのは小さなトートバッグ一つ。

対して、マツリの方は登山に行けるような大荷物だ。


「備えあれば憂い無し、でゴザルよ。

 食料は七日分。ミコネ殿の分もあるでゴザルッ!」


「たしかに……それだけあれば、安心だったかも」


――とはいえ、だ。

もしも、迷ったなら「七日」では済まないのかもしれない。


二人は立川駅のホームを駆け上がり、

青梅線へと乗り換える。


目的地は奥多摩方面――ではなかった。


ミコネとマツリの目的は「さぎり駅」。

この世界には存在しないとされる、()()()()である。



☆☆☆



「異界駅、ですか?」


「そうわよ。異世界系都市伝説の定番ねェ……。

 アンタも聞いたこと、あるんじゃない?」


ミコネがマツリと調査に向かう、前日のこと。

放課後――怪異撃滅クラブ、部室にて。


怪異撃滅クラブの生き字引、元オカルト研究会・会長である”歩く大図書館”こと榎木田えのきだセラは、門外不出の怪異蒐集秘録ライブラリーのデータを共有した。


スマートフォンで検索するタグは「#異界駅」。


怪異蒐集秘録ライブラリーを手元で開くと、

ズラッと並んだ項目の多さにミコネは驚いた。


「うわッ! いっぱいあるーッ!」


「にひひ、いっぱいあるわよぉ。中でも、一番有名なのは、遠州鉄道の新浜松駅から行けるっていうアレかしらね」


セラは項目の一つを指で示す。

項目の名は――『きさらぎ駅』。


「静岡県の……あっ、あたしも知ってます!」


「映画にもなったしさァ。遠州鉄道に実在する『さぎの宮駅』が元になったとされてるけど、これと似た異界駅の逸話には『つきのみや駅』なんてヤツもあるわ」


「なんだか、名前が似てますねッ!」


「他にも『かたす駅』や『やみ駅』……あとは『ごしょう駅』なんてのも。ああ、でも最後のやつは本当に『ごしょう駅』なのかわからないのよね。怪談の中では「『ごしょう』が最終地点です」としか言ってないから、実際は『ごしょう』かも」


「『ごしょう』って?」


「後生。つまり、()()()に行くってことじゃない?」


セラによると、異界駅にはいくつかパターンがあるものの、おおむね物語として共通する内容がある――それは、影のような人がいたり、あるいは誰もいなかったりと、『この世のものとは思えない駅』に降り立つというものだった。


「アンタが見つけた『さぎり駅』のウワサ。

 確かめてみる価値はあるかもね?」



☆☆☆



ミコネは、先日の事件を思い出す。

蒼龍館で起きた殺人事件で、犯人はミコネに言っていた――


「(この世には……()()()()()()()()()場所がある……って。それって、もしかして……『さぎり駅』のような、異界のこと?)」


「ミコネ殿?」


ミコネは傍らに立つマツリに問いかける。


「ねぇ、マツリちゃん。

 異界駅が、本当にあったとしたら……

 そこでは、死んだ人と会うことができるのかな?」

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