言葉の刃
よく研がれた刃を突き立てれば、血が出て肉が飛ぶ。
なら、怒りと悪意を込めた言葉には、どんな力が乗るのだろう。
誹謗中傷で誰かが殺せるなら、それより上手く言葉を操れる物書きがいれば、臓に届く気がする。
怒りに任せて拳を握る事ができなくとも、憎しみに支配された小節なら、奴の心に届くだろうか。
声が響く女が喜怒を歌えば心は震えるけど、能面を被って筆を走らせた女がいたら、殺意を文字にできるだろうか。
かつて、読んだ者を死なせる言葉が書けた死神がいて、
勇気の物語を生み出した女神がいて、
天才という言葉が嫌いな秀才がいた。
ああ、奴を――。
それくらい憎いのに、人形を編む器用さ、釘を打つ力の無いこの腕の、なんと無力な事か。
嗚呼
ああ
届け
王様の耳はロバの耳だったと、二回叫んだのだ。
幸せは地面に埋めた、ゆえにお前の不幸を聞かせてくれよ。