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魔法少女が終わらない! ~陰謀もギスギスもドロドロもありな全員死亡のバトルロイヤル展開から時間逆行魔法を駆使して目指せ大逆転ハッピーエンド!~  作者: 天都ダム∈(・ω・)∋
第三話 魔法少女を諦めない

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☆『九回目』『二日目』『朝』☆ その3

 ☆


 そもそもどうやって飛んでたのか知らないけれど――地上に降りてきたクァトランは、悪魔(くーちゃん)の身体に腕を突っ込んで、ニアニャの身体を強引に、ズルリと引きずり出した。


「アンタ、いつまで寝てるの、起きなさいよ」


 片手で器用にバシンバシンと頬を引っ叩くが、ニアニャはだらんと脱力したままだ。


「容赦なさすぎだろ」

「こいつにはこれぐらいでちょうどいいのよ。……おい、馬鹿悪魔」


 げし、と残った悪魔の身体を蹴り飛ばし、


「ニアニャの目が覚めないんだけど」

『ぞるるるる…………』

「は? わかる言葉で喋りなさいよ」

「いや、多分ニアニャの身体を使って喋ってたから、引っこ抜いたら通じなくなっちゃうんじゃないかな……」


 私が挙手して言うと、クァトランは少し首をひねって。


「…………戻す?」

「いやいやいやいや」


 しかしどうしたものか、悪魔(くーちゃん)曰く本体は自分の方で、ニアニャの方が《使い魔(マスコット)》って話だから、理屈的には悪魔(くーちゃん)から《魔力(エーテル)》を供給すれば動いてくれるのかな……。


『ぞる、る……』


 いや、なんか、そんな余裕なさそうだ。普通にクァトランが削りすぎて、《魔力(エーテル)》そのものが残ってなさそうに見える。


「…………ウチので良ければ使ってや」

「ぼ、僕のも……」


 おずおずと、ミツネさんとファラフが前に出て、誰かが何かを言う前に、《魔力光(エーテルライト)》を解き放った。


「こないなことして、何かになるとは思っとらへんけど……」

「…………ふうーん?」


 意味深に考え込むクァトランを他所に、ミツネさんとファラフの《魔力光(エーテルライト)》は、ニアニャに触れた瞬間、黒く染まり、体内に吸収されていった。


「…………ぐるぐるぐるぐる! はっ!」


 ばっ、と顔を上げたニアニャは、そのままの勢いで立ち上がると、シルクハットをひょいと外し、中から黒猫のくーちゃんを取り出した。

 …………え、そこからでてくるの?


「ごめんね、ごめんね、皆ー、ちょっとだけ、待ってねー」


 くーちゃんはピクリとも動かない、死んでいるのかと思ったら、ニアニャはなんと残った悪魔(くーちゃん)の残骸を、ぐいぐいと黒猫のくーちゃんの口の中に押し込み始めた。


 半分ぐらい押し込んだところで、残骸が空気中に溶けていき、代わりにくーちゃんの中の歯車が、ぐるぐると回りだし……ぴょんと立ち上がって、私が知る《使い魔(マスコット)》としての姿が戻ってきた。


 黒猫のくーちゃんを抱き上げると、ニアニャは私達を向いて、口を開いた。


「『完敗だよ魔法少女諸君、私の企みは、どうやら失敗してしまったらしい』」


 ニアニャの声で、ニアニャの姿で、ニアニャとは似ても似つかぬ口調で、悪魔(くーちゃん)の言葉が発せられる。


「『上手な盤面を作った自信はあったのだがね。一体何を間違えたのだろう』」


 それは、反省とか敗北を認める潔さとか、そういう概念とはかけ離れた言葉だった。

 単に事実を列挙し、結果を述べて、それを不思議に思っている、というそれだけの言葉。

 根本的に、倫理観が、概念が、存在としての意味合いが違う……悪魔。


「……くーちゃん!」

「『なんだい。ニアニャ』」


 ニアニャが喋って、ニアニャが答える。

 それはある意味、クローネの腹話術よりも不思議な光景だった。


「わたしはー……お嬢に死んでほしくなんてないよ―」

「『ふむ。そうだったのか』」

「そうだよー! わたしは、くーちゃんがくれたこの身体でー、お嬢と、クロクロと、皆と遊んでられるだけで、楽しいし、嬉しいよー?」

「『なるほど』」


 ぐるぐる、ぐるぐる。瞳孔の歯車が絶え間なく回る。


「『君に自由を与えたいと、私は思っていたのだが』」

「……そーじゃねーって」


 二人(?)の会話に割り込んだのは、クローネだった。


「あたしら、そもそも不自由だなんて思ってねーんだって。わかれよにゃ」


 くーちゃんの耳がぴくりと立って、ニアニャの顔を見上げた。

 ニアニャは、こくりと頷いて……それからぽいっとくーちゃんを投げ捨てた。

 ……いや、捨てるなよ。


「…………にゃはは、柄にもなく焦っちゃった。つーかよー、お嬢の腕見た時、あたしも死んだーって思ったじゃんかよー、なんかやるなら先に言えよーニアニャー」

「えー、くーちゃんのことなんてわかんないよー。どうせろくな事考えてないもんー」


 ニアニャ・ギーニャの【()】。

 自身が魔法少女ではなく、《使い魔(マスコット)》であったこと。

 嘘というよりは、ただ説明していなかっただけかも知れないけれど。

 …………おかげで、とんでもない目にあった。


「えっと、つまり、どういう事でしたの……?」


 状況に翻弄されるだけだったルーズ姫が、おずおずと尋ね。


「つまり、クァトランは死んだと思っていたけど生きていて、ニアニャはよくわからないけど無事で、とりあえずの問題は解決したのね?」


 委員長は眼鏡をくいっと上げながら、ざっくり現状を纏めてくれた。


「いや、それは……」


 この事態を招いた元凶の一人であることを自覚しているミツネさんが、何かを言おうとした時。


「…………そうです! 解決、したと思います!」


 ファラフが遮るように、声を上げた。


「わかったわ」


 全てを理解したと言わんばかりに頷いた委員長は、ぱんぱん、と手を叩いて、


「じゃあ、今から行くわよ。迷宮探索」





「「「「「「「「「…………………………えっ」」」」」」」」」




 委員長以外、九人の魔法少女の声が、重なった。


「細かいことはわからないけれど、問題は解決したんでしょう。だったら本題に戻らないと。もう出発時間は過ぎてるし、さっさと攻略しないと日が暮れるわ」


 初志貫徹。猪突猛進。石頭。

 マグナリア・ガンメイジここにあり。そりゃ正論だけどさ。正論だけどさ!


「ねえ、アタシ、片腕どっか行ったまんまなんだけど」

「私も《秘輝石(スフィア)》がちょっとバッキバキで……」

「ウチとファラフも、ニアニャに全部《魔力(エーテル)》譲ってもうて……」

「あれだけ暴れまわっといて何言ってるの。ここから先はペアじゃなくて全体行動だし、仲間がいればなんとかなるでしょう。なにか問題が?」


 その片腕のみで悪魔を徹底的に蹂躙したクァトランがまさか『ならない』と言えるわけもなく。私も否定意見が出せるわけもなく。


「……リーンちゃん」


 メアがてくてく近づいてきたので、ぼすん、と。

 遠慮なく体重を預けて、肩を寄せさせてもらった。

 気が抜けて、力も抜けた。少し甘えるぐらいは許してほしい。

 迷宮の攻略ぐらいなら……頼れる仲間(クラスメート)が揃ってる。

 最弱の魔法少女が、ちょっとぐらいサボったって、何の問題もないはずだから。


「あ…………メア、ありがとう、本当に、助かった」

「ううん、いいんだよ。それに……」

「それに?」


 メアは、それはそれは眩しく輝く、とても素敵な笑顔で告げた。


「基本的人権三ヶ月、だもんね?」


 …………ああ。

 うん、そうだった…………えーっと、何とか無かったことにできないかな。

 そう、時間を遡って、やり直したりとかさ。


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